かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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『ナチズム―ドイツ保守主義の一系譜』(村瀬興雄)

ナチズム―ドイツ保守主義の一系譜 (中公新書 (154))

ナチズム―ドイツ保守主義の一系譜 (中公新書 (154))

いわゆる「ユダヤ人説」の適否を含めたヒトラーの生い立ちからミュンヘン一揆の失敗までと、第二次世界大戦期のヒトラー発言を追うことで、彼自身やナチズムが「異常な突然変異」ではなく、国内の保守派や支配勢力との共通性・連続性を多分に持った存在である*1と論じた本です。
その東方拡大政策や反ユダヤ的政策への志向が第一次世界大戦期の第二帝国にも見られたことや、そもそもヒトラーナチスが当初からそうした発想を明確に持っていたわけではないといったことからそうした見解を跡づけており、興味深く読むことができました。ただせっかくなので、彼らが如何にして政権を獲得するに至ったのか、その経過についても触れて欲しかったです。確かに著者も指摘しているような「特定の政治勢力のみならず、少なからずの国民の支持があったればこそ…」という部分を浮き上がらせるためには、その時期の歴史を紐解くことこそが有益だと思いますし、それは現代への「鑑」ともなるはずです。

*1:より大衆扇動・動員といったものに特化した近い趣旨の議論としては『大衆の国民化』(ジョージ・L・モッセ)といったものもあります