現場を離れて久しい新聞記者のブログ。 読んだ本の紹介や旅行記(北朝鮮竹島イランなど)が中心です。 

目的合理性のある核実験?

北朝鮮が5回目の核実験か=豊渓里付近で人工地震波―日米韓、情報収集急ぐ
【ソウル時事】日本の気象庁などによると、北朝鮮の核実験場がある北東部の豊渓里付近で日本時間9日午前9時半ごろ、マグニチュード(M)5.3の人工地震波が検知された。
震源の深さはゼロ。日米韓などの関係当局は、北朝鮮が5回目の核実験を強行した可能性があるとみて、情報の収集、分析を急いでいる。
菅義偉官房長官は観測された揺れについて「北朝鮮の核実験に伴い発生した可能性がある」と述べた。韓国政府当局者も同様の見方を示した。安倍晋三首相は国民に対する的確な情報提供、米韓中ロをはじめとする関係国との連携を指示。日米韓は国連安全保障理事会に問題を提起し、対応を求める方針だ。
核実験と確認されれば、今年1月6日に「水爆」と主張する実験を実施して以来。核実験により核爆弾の小型化が一層進めば、弾頭に核を搭載した「核ミサイル」の脅威が現実化しかねない。朝鮮半島情勢は再び緊迫し、国際社会の反発が強まるのは必至だ。日米韓はさらなる圧力強化を図る見通しで、中国の対応が焦点になりそうだ。
北朝鮮には、米次期政権をにらみ、「核保有国」の地位を既成事実化させるとともに、9日の建国68周年に合わせ、国威発揚を図る狙いもあるとみられる。
(9月9日、時事通信)

またしてもやってくれました。今日の私の仕事もこれで決まりでしょう(笑)
よく父親に比べて金正恩委員長は予測不能だとかクレイジーだとか言われるようで須賀、少なくとも今回の核実験は、それなりの目的合理性を目指した行動と見做してよいと思います。
まずは国内の引き締めです。世界各国にある北レスの従業員のみならず、駐英公使までもが亡命してしまうというのは「社会的エリートが離反している」という意味において危機的な状況です。これを核実験による国威発揚でつなぎとめる・引き締めるという狙いは大いにあるでしょう。この日は朝鮮民主主義人民共和国建国記念日であり、実験を行った時間も現地時間でほぼ9月9日午前9時である*1という点を見ても、国内向けアピールの意味合いは強いと思われます。
国際政治的にも、ややこしいタイミングを突いてきています。東アジアで大きな国際会議が続き、北朝鮮に対して厳しい態度が示された直後に当てつけるかのように強行した、というのももちろんあるでしょう。しかし、より大きなポイントは、米中関係を中心とした六カ国協議参加国間の関係が不安定化している点にあると思います。昨今、北朝鮮のミサイルに備えるとして韓国に配備されようとしているTHAADの問題で、良好だった中韓関係が一気に悪化しており、東シナ海南シナ海問題も合わせてこれまでになく日米韓と中ロが対峙する様相が強まっています。どうせやるなら、周辺国の足並みが乱れているタイミングでやった方が後々の影響も小さいだろう。実際、安保理も含めて一致した行動をとりやすい環境ではありませんし、中国の出方次第ではありま須賀、その中国を含めて、各国ともに頭を抱えるタイミングではあるでしょう。
ただ、先述のようにアメリカが韓国にTHAADを配備しようとしている(少なくとも表向きの)理由はまさしく北朝鮮がミサイルに核兵器を積んで撃ち込んでくるかもしれないからであって、今回どう出るかはともかく、配備に反対する中国が北朝鮮への怒りを溜め込むことは間違いありません。その意味では、タコが自分の足を喰っているようにも見えなくはないわけで須賀、今回の挙が本当に目的合理的なものであったかどうかは、より長期的なスパンで思い知ることになるのでしょう。

*1:冗談で言っているように聞こえるかもしれませんが、この国はそういう数字合わせが大好きです。平壌にある体制宣伝的なモニュメントはだいたい何らかの数字にちなんで設計されています