かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『メディアと政治』(蒲島郁夫、竹下俊郎、芹川洋一)

メディアと政治 改訂版 (有斐閣アルマ)

メディアと政治 改訂版 (有斐閣アルマ)

読んで字の如く、メディアと政治の接点に着目し、さまざまな見地から論じた本です。大きく「理論篇」「実際篇」「変化篇」の三つに分けられており、ざっくり言うとそれぞれが「マスコミュニケーション論」「政治報道現場の今昔」「小泉劇場とネット政治」に対応した内容を論じています。異なる学問領域からの議論に加え、政治取材の現場の話まで一冊の本で紹介しようという試みで、読んでいて純粋に楽しかったです。
ただ一方で、生煮え感が拭えないのも事実です。ごく個人的に言えば、マスコミュニケーション論は大学でやったし、そ言えば政治学の関連する内容も著者の一人に習ったし、現場の話は間接あるいは直接見聞きしているし…となった場合に、それぞれがそれぞれのまま読む側に投げ出されているような感じだと、「うん。それで?」となってしまうのです。「政官の核外にあるマスメディアが、その外にある集団の選好をすくい上げて多元主義を注入している」という「メディア多元主義モデル」がこの本全体を貫く基本である、とされてはいま須賀、モデル自体の妥当性は一定以上説明できていても、それを一冊の核に位置づけることにまで成功しているようにはちょっと見えませんでした。目立った印象としては、いわゆる現場論が全体の中で浮いてしまい、特に政治学的な部分とうまくリンクしていない点で、皮肉にもそのこと自体が、これまでの政治報道現場の特異さを示唆しているようにも見えてしまいます。
中身というより編集的な部分でケチをつけてしまいましたが、一冊でメディアと政治に関するいろんな話が読める本には違いなく、退屈させられることはなかったです。