大衆の国民化―ナチズムに至る政治シンボルと大衆文化 (パルマケイア叢書)
- 作者: ゲオルゲ・L.モッセ,George L. Mosse,佐藤卓己,佐藤八寿子
- 出版社/メーカー: 柏書房
- 発売日: 1994/02/01
- メディア: 単行本
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とするならば、著者が訴えているのはナチスの異常さではない、そう理解すべきでしょう。日本の戦国時代に関するものとして、「織田がつき 羽柴がこねし 天下餅 すわりしままに 食うは徳川」という歌が知られています。史実としてどのくらいそう言えるのかはそう簡単ではないで生姜、この本において著者が描こうとしていたのは幾分それに近い光景であって、「すわりしままに食」ったとまでは言えないにせよ、少なくともこの「新しい政治」が全工程を一手に引き受けた生産者による限定品ではないことを示そうとしたと言えるでしょう。つまりそれは、民主政治の中の別の場所でも起こった/起こりえた現象であり、また、起こりえる現象であることをも意味しているのです。
『ナショナリズム論の名著50』(大澤真幸編)で訳者によって紹介されていた本で、まさにここでの議論を北朝鮮にどこまで応用できるかが最初の関心でした。その意味では、ややこの本の方が射程の大きい議論であることは否めませんが、ものものしい「国民的記念碑」の前に「聖なる広場」が広がる光景はまさに現地で見てきたものですし、「人間の証し―『映画芸術論』抄」を著わす*1など、金正日総書記は映画を中心とする芸術に非常に造詣が深かったとされています。その意味でも、参照すべき点は多い一冊だと考えています。
*1:レビューは投げ出しww