かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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『黄長ヨプ回顧録 金正日への宣戦布告』(黄長ヨプ*2 )

金正日への宣戦布告―黄長〓@57F6@回顧録

金正日への宣戦布告―黄長〓@57F6@回顧録

金日成金正日に仕え、主体思想の「大成」に大きく貢献した学者が、自身の来歴を回顧しながら体制、というより金正日を告発する本です。今では2万人を超えたという脱北者の中でも、著者は政権最高位にあったとされ、読めば政権中枢の事情にも通じていたことがよく分かります。
また、読んでいくうちに、主体思想の理論家である著者が、その思想とマルクス主義との差異をある種のヒューマニティーに見出していることも理解していけるので須賀、どうしても私などから見ると、単線的・必然的な歴史の発展を前提としているところなど、やはり両者の共通性は大きいような気がしました*1。それでも著者がそれらの相違を強調するのは、第一義的には理論家としての矜持といったところなので生姜、翻って金日成金正日は、ソ連と中国という東側の大国に対する国際政治力学上あるいは政治理念上の独自性をアピールし、ひいては自らの体制を正当化するためにそれを用いたわけで、その学者と権力者の呉越同舟ぶりはこの本のハイライトの一つでもあると思います。
以下の一節は、著者がかつて「北朝鮮文革」の被害を被った時期に思い至ったとしています。やや抽象的に過ぎま須賀、北朝鮮という国の共産主義化は、まさにこのように推移したと言っていいのではないかと考えます。

わたしはこのときから階級的利益を社会共同の利益、人類共通の利益の上に置く階級主義*2は、階級利己主義に転落せざるをえないだろう、そして階級利己主義は指導者の利己主義につながるのは必然であり、それは指導者にたいする個人崇拝と個人独裁に集約されるしかないとの結論を下すにいたった。

*1:本人も強く否定するところではないので生姜

*2:要は、真の主体思想はそうではないと暗に言いたいようですね、というのは筆者注