かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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三つのレベルで見た北朝鮮の「衛星打ち上げ」

例えば、今回の北朝鮮の「衛星打ち上げ」予告を先述の三つのレベルで分けてみると、こうなるでしょう。

  • 国際社会

あちこちで言われているように、このレベルがこの問題を考える主戦場でしょう。「米朝合意のミサイルには該当しない」というのが北朝鮮側の主張のようで、核開発に関する他の合意を順守する姿勢を強調しているのも示唆的です。各国の反発は織り込み済みで生姜、大統領選を控え、相変わらず中東にエネルギーを割いている(割かざるを得ない)アメリカが、先の合意で得たものまで破棄して厳しい態度を取ることはしないだろうとの読みでしょうか。加えて、打ち上げが成功すれば、それ自体がアメリカに対する大きな交渉カードになるでしょう。ちなみに言えば、この予告自体も交渉カード化することは可能で、打ち上げ取りやめと引き換えに、何らかのアメを要求するという戦法もなくはありません。しかしこの時期によくもまあという感は拭えませんが、そこは別のレベルで説明した方がよいと思います。

  • 国内社会

4月15日、金日成の生誕100年のその日の前後に打ち上げると宣言していることが、国内社会への意図を如実に表しています。今年実現するという「強盛大国」*1とやらは、思想、軍事、経済の三つにおける大国という話らしいで須賀、これを「軍事」の成果と喧伝するのは少なからず矛盾がある気がしますけれども、国内向けに「大国」ぶりをアピールする材料として利用しようということなのでしょう。そしてこの予告をテレビで大々的に流した以上、「アメリカに屈して打ち上げを取りやめた」とみなされかねない判断は、かなりとりにくいと言わざるを得ません。

  • 宮廷内

ここにももちろん、「金日成朝鮮」の正統な後継者たる地位をアピールしたいという狙いはあるでしょう。加えて言うと、このレベルの議論に憶測が交じるのは北朝鮮の場合宿命とでも言うべきで生姜、宮廷の若き主である金正恩は、その宮廷内での威信を保つため、「強硬な選択肢を避ける」という判断を行いにくいという傾向はあるように思います。金正恩という人物固有の、あるいはその若さによる攻撃性を指摘する声もあるようで須賀、私としては、彼のパーソナリティの問題以上に、強硬姿勢で威信を保つという要請が大きいことの方が重要な気がします。それは、具体的に軍の突き上げをかわせなくなったのか、彼自身やその周囲が発案したのかといった外見上の経緯を問いません。
まあ、これで何が分かったかと言われれば心もとないわけで須賀、例えば取りやめがあり得るかどうかといった相反する見方が可能な論点に関して、要素を切り分けながら考えることができたのは悪くはなかったのではないかと言ってみる。

*1:「国家」に「格下げ」したなんて話もありますね