かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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「重篤問題飲酒者」の叫び/『酒乱になる人、ならない人』(真先敏弘)

酒乱になる人、ならない人 (新潮新書)

酒乱になる人、ならない人 (新潮新書)

アルコール医療で有名な横須賀市の国立療養所久里浜病院に勤務する(していた)著者が、アルコールと遺伝子や脳の関係を中心に、飲酒と人間の関係についての知見を紹介する本です。ちょっと古い本ではあるので須賀、本が書かれた時点で何がどのくらい分かっていて、どこから先が未解明なのかをはっきりと区別して議論が進められており、読んでいて好感を持てましたし、またある程度のことは専門外の人間にも分かるように基本的なことから説かれているので、その点も非常に親切だと感じました。
酒に酔ってそれが醒めるとは生物学的にどんな状態なのかということや、それゆえにどんな遺伝子を持っていることがその過程にどう影響するのかといったことについての説明も興味深く読みましたが、やはり個人的に印象に強く残ったのは、より長期的な視点で、飲酒が脳や神経にどんな影響を及ぼすのかという部分でした。よく「記憶が飛ぶ」*1人の記憶力低下の可能性や、アルコール依存による脳の委縮、末梢神経の障害…やはり自分の頭がどんどん悪くなっているような気がするのは無関係ではないかもしれません。そして妊婦の飲酒による胎児アルコール症候群の話を聞いてしまうと、妊娠の意思や可能性のある人には著者と一緒に注意喚起をしたくなってしまうくらいです。それらの意味では、これまで自他共に認めるアル中として世を渡ってきた私にとって、とても悪い本に出会ってしまった気がします。
しかしまあ、本の中にもある通り、こうしたことを念頭に置いたうえで、自分がどの程度の酒を飲んでいくかは価値観の問題でもあるわけです。「酒を断つくらいなら死んだ方がいい」というのもその人の生き方であり、価値観です。私の立場からはちょっと困った話で須賀、私の父にこの本を読ませて断酒を迫っても、恐らく彼はそう言い放つでしょう。この本によれば酒好きは遺伝するそうで、それ以前に私の父方の家系はその好例ですらあるようにも思えま須賀、そんな星の下に生まれた私が今「酒は大好きだけどそのせいでこれ以上頭が悪くなるのはいやだな」と考えているのも、それまた私の価値観なのでしょう。であるならば、私はもっとそのことを意識して夕方以降の時間を凌がねばなりません(笑)
ちなみにこの本では「久里浜アルコール依存症スクリーニングテスト」なるものが紹介されており、設問に答えて集計した点数が0点以上だと「問題飲酒者」、2点以上だとアルコール依存症の可能性がある「重篤問題飲酒者」で「この本を読んだ上で、即刻精神科医にご相談」することを勧められているので須賀、私の戦闘力数は53万です点数は7.7でした。
そして明日は、取材で知り合った酒飲みの集まりに参加するため、深酒をすることがほぼ確定しています。

*1:ブラックアウトというそうです