かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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俺たちの正男/『父・金正日と私 金正男独占告白』(五味洋治)

父・金正日と私 金正男独占告白

父・金正日と私 金正男独占告白

「俺たちの正男」へのインタビューとメールのやり取りを紹介した本です。と聞いて、この本に天地がひっくり返るような衝撃的事実のオン・パレードを期待される方の思惑は、必ずしも当たらないでしょう。むしろ、金正日の長男であり、日本に来た理由を問われて「ディズニーランドに行きたかった」と述べたとされる人間が、これから挙げるように、大まかに言って「なんでもなさそうな」発言をすることこそが「衝撃的事実」とみなされるでしょうし、それは一皮めくって言えば、日本のメディアが彼をどんなステレオタイプでもって見ていたかということでもあると思います。

封建王朝以来、近来、権力世襲は、もの笑いの対象になるでしょう。社会主義理念にも符合しません。しかし北朝鮮の内部安定のために三代世襲というおかしな権力継承を選択しなければならなかったとすれば、それに沿うべきだということが私の考えです…北朝鮮の内部不安定は地域の不安定を招く可能性のある危険なものと考えます。

私は北朝鮮の後継者になるつもりはありません…期待する人々がいるといっても、他人の期待を充足するために、自分の人生を壊したくありませんね。

(改革・開放に関して)皆が変化する時代に北朝鮮があのようにかたくなな姿勢では、どのように生きていくのか分かりません。

なんとwwwな発言が続くわけで須賀、ご興味のある方には、是非直接手にとって読んでいただきたいと思います。物理的かつ社会的にお渡しできる方にはお貸しします*1
金正男がメールのやり取りの中で「比較的事実に近い」と評した『マンガ 金正恩入門』のレビューで私は、「長い目で北朝鮮体制のソフトランディングを志向するなら、金正男による7月王政的な段階というのが頭に浮んだ」なんて言ってみたことがありました。そしてこの本の著者も、金正恩体制が破綻した場合の中国による「正男擁立シナリオ」について何度か言及しています。手前味噌なオチで恐縮ではあるので須賀、もちろんその現実性を考える上では中国の思惑やそもそもの北朝鮮国内情勢といった多くの要素があるにせよ、この本に紹介された金正男の発言の中で、少なくともそんな私の「希望的観測」を大きく裏切るようなものはなかったかなと、読み終えた今は感じています。

*1:現時点でお2人とそのような約束をしています