かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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ニッポンの暴言

ニッポンの暴言

ここ数年を中心に、政治家などの「暴言」を集めた本です。でも、そんなの全然暴言じゃないだろうみたいな発言も多く、ちょっと無理やりな部分も大いに感じました。
そもそも何がある発言を暴言たらしめるかというと、それは広く言えば「社会的合意に反する」ということだと思うんですね。事実誤認というのもそこに含まれますし、差別的発言も、差別に反対する社会的合意に反していると理解できます。となると、問題になるのは社会的合意のレベルです。法的にどうあれ「人を殺してはいけない」という社会的合意がない場合、「小泉首相は狙撃してもいい男」(西村真悟)という発言は暴言にはなりませんし、「憲法9条は守られるべきだ」という命題が社会的合意であるなら、それを否定する発言は暴言とみなされるわけです。この社会的合意のレベルに関する議論は、個人レベルでも言うことができます。周りに非難されても知らんぷり、という確信犯的なケースというのは、まさにこのレベルの差によって生まれるものでしょう。そしてまた、ある発言の社会的「震度」は、その社会の合意のレベルを反映しているので、そこからある時ある場所での、社会的合意を推定することも可能となってくるように思います。
このように考えると、この本は社会的合意に関するレベルをかなり高く設定しているように思います。改憲論に私は与しませんが、それが社会的合意であるとまでは考えていません。