- 作者: 坂口安吾
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2000/05/30
- メディア: 文庫
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「堕落論」とだけ聞くと、彼がヒロポン中毒に苦しんだイメージから、どんだけヒドイ主張なのかと耳目を引く部分ではありま生姜、実際そこにあるのは生身の人間への力強い肯定です。歴史や制度に抗って、欲しいものを素直に欲しいと言い、厭なものは厭と言う、つまり堕落することが人間性を正しく発露させ、人間を救う。文学と人間の関係についても、「文学は人間の煩悶の中からたまたま出てきたものであって、いくら作品が評価されたって死んだら終わりじゃん?」と喝破する。そこに戦争という強烈な体験の影響を見ることは容易で生姜、「日本国民諸君、私は諸君に、日本人及び日本自体の堕落を叫ぶ。日本および日本人は堕落しなければならぬと叫ぶ」という安吾の叫びは、まさしく心からの人間肯定の詩なんだと思います。そしてやはり、人生において長く悩み、考え続けてきた彼自身の人間的強さを感じざるを得ませんでした。
あと「戦争論」は、カントの「永遠平和のために」に出てくる自然の合目的性の議論と類似しています、か??