若き日の故・
金正日総書記による「
映画芸術論」の抄訳本です。
『大衆の国民化』(ジョージ・L・モッセ)の問題意識で読み始めたので須賀、ほとんどが作り手側の心構えや留意点のような話で、その受け手に対するしっかりした定義がないため、それらをつなげて読むというのはちょっと難儀な作業でした。敢えて言うなら、著者(
金正日)がよしとする映画の形式的制約の強さは、その議論の中でも理解できるかもしれません。逆に、冒頭の著者評伝のようなところを読んで改めて感じたのは
北朝鮮という国の個人崇拝の凄まじさであって、「
ヒトラーは、自分の後任者が如何に無能であっても『
ヒトラーなき
ナチス』が十分に機能するような体制づくりを志向した」というような『大衆の国民化』での指摘との対照ぶりばかりが印象に残りました。
それにしても―私の能力の問題で生姜―、こんなに読んだ内容が頭に入ってこない読書体験は初めてでした。