- 作者: 飯尾潤
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/07/01
- メディア: 新書
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ただ、個人的には非常に納得のいかない点が一つあります。それは、日本そして諸外国の政党機構やその社会との関係について、十分に触れられていないことです。著者はリクルート事件以降の「政治改革」の流れで、権力核としての内閣総理大臣の指導力が発揮される素地が整いつつあるとした上で、マニフェスト選挙を徹底させる、すなわち「政党・首相候補・政策」の三点セットを選ぶ選挙が定着することが権力核の強化につながる、としています。しかし、そのマニフェストを発信するためには何が必要で、何が障害になっているのか*1について日本の現状に即して分析しなければ、「日本の政党のマニフェストなんて羊頭狗肉で、これまでの選挙公約と変わらないじゃないか、もっとちゃんとやれ」と言っている野党やマスコミと大して変わらないように思えるのです。いやこれはそう指摘することがダメだとか言ってるんじゃなくて、言ってしまえばそれとはまた違う役割を私はこの本に期待したのになあ、ということでしかないんですけどね。
この本は安倍晋三元首相(笑)が参院選で惨敗する直前の、2007年6月に書き上げられています。その後現在にまで続く「ねじれ国会」についても示唆があり興味深いで須賀、参院選で現れ、また次の衆院選でも現れそうな「選挙の激情化」は著者の議論の中でどう位置付ければよいのでしょうか。有権者の激情がドラスティックな選挙結果をもたらすことについては、メディア論のみならず広く現代社会の雰囲気を論じるようなアプローチからも迫れそうで、大部分がこの本の射程の外だということにはなろうかと思うので須賀、政党が先述の三点セットをうまくそろえて打ち出せるか、という意味ではつながってくるような気がします。となると好著だけに、その部分については残念でしたかね〜
*1:せめて政策軸の不一致くらい言及がほしかった