- 作者: 西田典之
- 出版社/メーカー: 弘文堂
- 発売日: 2002/03
- メディア: 単行本
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各論となると、一つ一つの罪の構成要件とその刑の部分を学ぶわけで須賀、その刑の軽重の根拠づけに「期待可能性」という概念が用いられていたのはいちいち興味深かったです。簡単に言うと、「みんなやっちゃう(=犯罪を思いとどまることを期待できない)ようなことは重い刑にはできないよね」ということなんで須賀、犯罪への誘惑の大きさ(=期待可能性の低さ)と刑の重さを反比例させよう*1という発想は、なんだか需要と供給の関係みたいだな…と思って昔読んだ本を繰ってみたら、「犯罪と刑罰の等価交換」(パシュカーニス)なんて言葉があるそうです。市民は犯罪と刑罰を両天秤にかけて、それらの取引をしているという考え方のことだそうで須賀、「期待可能性の低い行為は刑罰を軽く」という発想はそれを裏付け、基礎づけていると言えるでしょうし、最近言われる厳罰化の方向というのもその原理に立った施策ですよね。この厳罰化*2にはマスコミのアジェンダ・セッティングがかなり機能しているようにも感じるので須賀、そういう一点突破的な厳罰化が法体系全体としての刑罰のあり方をゆがめはしないか、不謹慎な言い方にはなりましょうがこの「犯罪と刑罰の等価交換」という言葉からアプローチすることも有意義なのではないでしょうか。もちろん飲酒運転を是認する意図はないですし、「卑劣な犯罪を抑止すべき」という意思から厳罰化する、というロジックも成り立つとは思うんですけどね。バランスの問題もあるよね、と言いたいのです。