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取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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日の丸汚損や君が代替え歌が刑事罰に? by自民党

国旗損壊罪、刑法新設目指す=自民
自民党石破茂政調会長は2日午後の記者会見で、日本を侮辱する目的で日の丸を傷つけたり汚したりした場合、2年以下の懲役または20万円以下の罰金とする「国旗損壊罪」を新たに盛り込んだ刑法改正案を今国会に提出する方針を明らかにした。
行刑法には、外国の国旗については損壊罪が明記されているが、日の丸に関する条文はない。石破氏は「外国の国旗を損壊した者に対する罪があるのに、なぜ日章旗(日の丸)を汚損しても罪に問われないのかと言うのは素朴な感情だ。国旗国歌法で日本の国旗が日章旗だと定められた時に(国旗損壊罪を)立法しておくべきだった」と語った。
(3月2日、時事通信)

自民が「国旗損壊罪」提出へ 君が代替え歌に刑事罰検討
自民党は2日、国旗損壊罪を新設する刑法改正案を今国会に提出する方針を決めた。日本を侮辱する目的で日章旗を焼いたり破いたりしたら2年以下の懲役か20万円以下の罰金を科す内容。民主党公明党など他党にも協力を呼びかけて成立をめざす。
尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件などをきっかけに自民党は保守色を強めており、「君が代」の替え歌など国歌への侮辱に刑事罰を科す改正案も検討する。
(3月2日、朝日新聞)

菅政権がいよいよ詰みの様相を見せ始め、都知事選が混沌をの度合いを増し、神奈川県民が唖然としている今このニュースを紹介する私は、つくづく残念な奴だと思います。いえ、私はもっと唖然としています。
そもそも外国国章損壊罪(刑法92条)というのは、本棚で埃と戯れていた西田刑法によると「器物損壊罪的側面と外国に対する侮辱罪的側面を有するが、終局的には、わが国の外交上の利益を保護法益とするものである」のだそうです。要するに、「日本の人がほかの国の国旗を侮辱なんてしたら、結局は日本の外交がうまくいかなくなっちゃうんだからやめてね」ということです。
その上で石破氏は「外国国旗だと罰せられて日の丸だと罰せられないのは素朴な感情としておかしいよね」と言っているわけで須賀、果たしてそこは「素朴な感情」で決めてよい話なのでしょうか。
そもそも主権国家体制下において、(盗用などが疑われるならともかく)ある国の人が他国の国旗が特定の形をとることに反対する、ということは原則として考えにくいことでしょう。例えば日本人が「アメリカが星条旗を国旗とするのはおかしい」と主張した、なんて話は少なくとも聞いたことはありませんし、北朝鮮の国旗のデザインに対して反対する、ということが妥当だとも思いません。なぜならそれは、その国の国旗はその国が決めることだからであり、その決定は基本的には尊重されるべきものだからです。
では、ある国の人が自国の国旗について賛否を表明することはどうでしょうか。日本の国旗が日の丸であることは、国会の議決によって国旗国歌法が成立することで決まりました。ですので理論的に言えば、今国会でこの法案を廃止し、日の丸を国旗ではなくすことも可能です。主権者たる国民の多数の反対は、日の丸の地位を変えることができるのです。この両者の違いは、「素朴な感情」と言って済まされる程度のものなのでしょうか?
私は決して、日の丸を焼いたり汚したりする行為を称揚するつもりはありません。そうする権利が保護に値するともあまり思いませんが、先述した差異がその「素朴な感情」とやらによって簡単に捨象され、結果として国家のシンボルがその強制力*1を増すことになるとすれば、それは私の少なからず危惧するところであります。
そして君が代の替え歌です(笑) 日本の国家が君が代だというのは、これも言うまでもなく国会の審議を経て定められたことで、それに対する論評や風刺が刑事罰の対象になれば、それは言論弾圧以外の何物でもありません。私は幼少時から替え歌を作るというのは比較的得意としていまして、もしめでたくそうした法整備がなされた暁には、私がその刑事罰を受ける第一号となれるよう、今から研鑽を積んでまいりたいと思っています。
てかこの人は確実にアウトですよね?ww

*1:汚損などしてはならない、と刑法に定めるのは間違いなく一種の強制力です