かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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昭和史 〈戦後篇〉 1945-1989

昭和史 〈戦後篇〉 1945-1989

読んで字のごとく、『昭和史』*1の戦後編です。語り口はそのままに、戦後の昭和史をカバーしています。と言っても全17章のうちサンフランシスコ平和条約までに10章、そこから沖縄返還までに6章が割かれ、残りの17年をまさに「脱兎のごとく」駆け抜けるという構成になっています。それは72年以降はまさに私たちが生きる「現代史」であり、歴史を語る上で必要な資料や証言の面でもまだ不十分と考えられるから、と著者は説明しています。
確かにそれはもっともだとは思うので須賀、では最後の章となってバブル期やそれ以降の官僚たちを「戦争中の官僚である軍人、参謀連中がやったのと同じようなことを繰り返してしまう」のではないかと喝破する時、果たしてそれで十分なのかという疑問は感じざるを得ませんでした。もちろん彼は、言わば独立後の日本を一貫して見続け・論じ続けてきたジャーナリストであるわけで、彼らの行状・エートスや「金属疲労」を起こした官僚制の問題点について語ることは十分可能なんだろうと思うので須賀、それを実質的に欠いた文脈の中で「バブル後の滅びの40年」*2と言われても、「歴史は繰り返す」という慣用句の言い換え以上のものには聞こえてこないというのが正直な感想です。
あともう一つ言うなら、戦後の経済復興から高度経済成長に至る過程の中で、戦前旧商工省などで活躍した官僚たち、あるいは通産省(これも「旧」なんですねw)の果たした役割というのが十分評価されていないという印象は受けました。確かに岸内閣の時代が政治的動乱の時代であったことは間違いないとは思うので須賀、一方で彼やその取り巻きの統制経済的な政策が、結果として日本の経済成長を大きく支えたことも否定はできないと思うのです。
とはいえやはり勉強になったし面白かった、というのが一番の感想です。今度文藝春秋の方とお話しする機会もあるので、半藤さんについていろいろ聞いてみましょうかねw
北岡伸一「あれは素人だね、素人にしてはよく書けてるけど。君もっとちゃんとした本を読みなさい。ボクの本を(ry」

*1:戦前編のレビューはこちら

*2:彼は「明治国家も日露戦争までの約40年で成果を挙げ、敗戦までの約40年で崩壊した。そしてそれから約40年でバブルの絶頂を迎え(ry」ということを何度か言っています。つまりバブル崩壊後の40年は、また戦後日本の成果を破壊しかねないのではないかという危惧を抱いているわけです