- 作者: 浅羽通明
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2006/11/01
- メディア: 新書
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ただ、それを踏まえた分析や主張の部分にはあまり賛成できませんでした。特に後半の戦後日本に関するあたりなので須賀、戦後日本においては、「右翼」とされた側*1が社会主義とも揶揄されるような経済政策を推進し、また軍事的な対米自立に踏み込まなかった一方、「左翼」側の多く*2も共産主義革命貫徹を主張せず、非武装中立の担保を示さなかった。そのことについて著者は批判的であり、経済的にも成長し、また数多の社会問題についてもそれなりの解決がなされてきた戦後日本においては、大きな理想つまり「生きる意味」を示してくれるのは右―左の対立軸ではなく、民族や宗教であると主張しています。
しかし著者が指摘したように、左右両陣営が言わば修正主義的な態度を取ってきたことが、なぜ批判に値するのかよく分かりませんでした。「右ならアメリカこそが敵のはずだ」「左なら中ソと一緒に革命闘争をすべきだ」といった批判は、彼らが共に「正義を失い」、「新たなビジョンを示しえていない」ことより、著者の勝手なラベリングに問題があるが故のものなのではないかという気がします。またもし現代日本の置かれている状況が、著者も挙げている意味合いにおいて「大きな物語の終焉」と言うべきものならば、このような修正主義的な態度こそが必要なのだと思いますし、むしろ著者が左右イデオロギーに対置する民族や宗教といった言説が「大きな物語」なのではないかという気がするのです。
話がまとまっていた分、論理構成の「キレイさ」に引っ張られてしまったのでしょうか。