- 作者: 半藤一利,保阪正康
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2015/08/06
- メディア: 単行本
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鈴木貫太郎やいわゆる海軍の三羽烏*1、陸軍では石原莞爾、長州嫌いで知られた東条英機などが、「賊軍出身者」としてどんなキャリアを歩んできたのかが紹介されており面白かったです。ただいかんせん牽強付会すぎて、理屈の上で無理がある部分が多いんですよね。「薩長出身の連中には、『自分たちが作った国家だから、自分たちで滅ぼしたっていいんだ』という厚かましい精神があったと思う」(半藤)などというのは最早言い掛かりに近いですし、「薩長の作った国家の歪みを抱えたまま、悲惨な戦争に突き進んでしまった」(保阪)というのも、時代に応じて国家を運営していく責任は、第一義的に同時代の指導者にあるのではないかと言いたくなってしまいます。
これでは「勝てば官軍」を批判していたつもりが、「戦争に負けた国家体制を作ったのは山口と鹿児島のやつらだ、あいつらが悪い」という「負ければ賊軍」と同じロジックになりかねない。オセロゲームは分かりやすいで須賀、歴史を学ぶ上ではあまり有益ではないでしょう。
まあ対談者の2人も、さすがにそこまでのことを主張するつもりはないでしょう。「この国が滅びようとしたとき、どうにもならないほどに破壊される一歩手前で、何とか国を救ったのは、全部、賊軍の人たちだったのです。これは、偶然といえば偶然なんですが*2ね」(半藤)。このぐらいのスタンスで読めば、興味深い本ではあると思いますけれども。