日本の情報機関である内閣情報調査室(内調)、公安警察、公安調査庁それぞれの機構や活動を実例を挙げながら紹介しつつ、それらの「三つ巴」の関係と、北村滋前内閣情報官の下で内調が主導権を得つつある近況を述べた本です。
有名なものも含め、事件の展開を追いながら各情報機関について知ることができる点では、読みやすい本だと思います。ただ、これら機関の活動に対する批判的眼差しが欠けている点は非常に気になりました。
内調が自民党総裁選で一方の候補のために情報収集・分析をすることは、組織の「私物化」に他なりませんし、公安警察がムスリムへの監視を強めていたことも、その捜査資料が流出したことで批判を浴びました。彼らが権力を濫用すれば、深刻な人権侵害につながりうる。その観点を欠いてしまえば、情報機関について理解を深めるには不十分な議論と言わざるを得ません。