かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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二極化する筋書きの巧拙/「西郷どん」第十一話

第十一回「斉彬暗殺」|NHK大河ドラマ『西郷どん』
今回はいろんなことがありました。島津斉彬の息子・虎寿丸が急死し、斉彬自身も病に倒れます。西郷吉之助が橋本左内に頼んで調べたところ、斉彬の食事からヒ素*1。その場で出くわしたいかにも怪しげな男が薩摩弁を話していたことから、吉之助が高輪の斉興・お由羅を訪ね詰問しようとするも返り討ちに遭ってしまいます。その顛末を聞いた斉彬は「国難が迫る今、自分の命などどうでもよい。毒を盛ったのが誰かなど詮索している場合ではない」などと吉之助を叱り飛ばしたのでした…
特に今回は、筋書きとしてうまいところとそうでないところが二極化していた印象です。前者で言えば、一橋派と南紀派の対立の構図がはっきり浮かび上がってきました。宴席で本人が何と言ったかはともかく、将軍・家定の後継に一橋慶喜を推す水戸斉昭・松平春嶽島津斉彬らと、紀州徳川慶福を推す井伊直弼らの対立が顕在化してくる。斉彬暗殺未遂の黒幕とリンクしそうな気配もあり、ここがこの先の政局の中心になってきます。
また、短いシーンでしたが、島津久光大久保正助の絡みも後の伏線になりそうです。ちなみに久光が探していたのは、1824年にトカラ列島の宝島にやってきた英国船と島の武士が牛を巡って争い、イギリス人1人が射殺された出来事(宝島事件)についてのものです。英国と事を構えることをも想定する*2スタンスは兄・斉彬と対照的ではありながら、最早序盤のようなただのマザコンキャラではないことを強調する一幕でもあったでしょう。
逆にどうかなと思ったのは、終盤の吉之助vs斉興・由羅と、斉彬に蹴飛ばされるシーンです。西郷吉之助という人間の成長を描く意図はわかりましたが、いくらなんでも証拠もなしに(かつての恩師・赤山を切腹させた)斉興のところに殴り込むのはいくらなんでも短慮に過ぎます。あと、これは役者のせいではないので生姜、斉彬のいかにも「憂国の士」的な啖呵は鼻につくんですよね。最近も、ずっと前から分かっていたことを急に「国難だ」と騒ぎ立てて議会を解散した人がいましたけど、概してこういう危機を煽るような言葉は容易にマジックワード化してしまいます。それは脚本においても然り、ではないでしょうか。そもそも吉之助の行動は明らかに斉彬の立場を損じるものだったわけで、そこをたしなめればよかった気がします。
最期に細かいんで須賀、前回あれだけ「西郷には幻滅だ」と言っていた橋本左内が今回は(一橋慶喜も交えて!)仲良くつるんでいるのにはちょっと笑ってしまいました。しかも慶喜刃物男が現れた時に「行け、西郷!」って、ポケモンじゃないんだから…ww

*1:ヒ素で毒殺説と言えば個人的にはナポレオンですかね

*2:まあ、これは後に現実化しま須賀…