かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『国際紛争』(ジョセフ・ナイ、 デイヴィッド・ウェルチ)

国際紛争 原書第9版 -- 理論と歴史

国際紛争 原書第9版 -- 理論と歴史

『外交』(キッシンジャー)からの流れで再読しました。この本でもリアリストの頭目として紹介されていたキッシンジャーの著作と対照的に、経済や保健・テロなどといったグローバルな交流や事象にもしっかり光を当てていたのがやはり印象的でしたね。まあそこは前者が物語的であり、後者が教科書として書かれているという相違の反映でもあるわけで須賀、ナイ流に言えばパワーポリティクスという一つのチェス盤に特化して語り進めるなら物語風にするのが、経済や脱国家的課題も加えた三つを網羅して語るなら教科書風にするのが、それぞれ好ましいという側面は多分にあると思います。手に汗握って読み進められるのは、自身が関与した時期を除いた(笑)キッシンジャーの著作でしょうし、二つの大戦を同じ道具立てから解きほぐしてみせるなど、方法論として分析的なのはナイ・コヘインの著作ということになるのだろうと思います。
2回目とはいえ、キッシンジャーとナイの月並みな対比だけで終わってもしゃあないので追加で一言だけ。この本では、北朝鮮について「行動の予測が難しく、核やミサイルの開発活動が活発である点が危険」としているので須賀、『北朝鮮 瀬戸際外交の歴史: 1966〜2012年』(道下徳成)のような研究もあって、それが一定以上成功していると言ってよさそうであるということは付け加えてもいいのかなと思います。まあ、代替わり後はそれがさらに難しくなっていて、しかもその最も重要な相手方にもその傾向が見られる、というのがここ1カ月くらいの騒ぎの原因なんですけどね(笑)