かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『亭主元気でマゾがいい! 1』(六反りょう)

亭主元気でマゾがいい!(1) (モーニング KC)

亭主元気でマゾがいい!(1) (モーニング KC)

元SM女王様の漫画家が、SMバーの客だったM男との結婚生活を描いたマンガです。その設定(というよりそれが事実なので須賀)でマンガを描く時点で半ば企画勝ちではあるので須賀、実在の登場人物が楽しそうに、かつ大真面目に生きている様が活写されていて結構笑えます。この手のものは多分、ドリフのコントみたいに出演者が半笑いで演じていては急に興醒めしてしまう気がするんですね。下ネタも多いですし基本的にコミカルなタッチではありま須賀、おちゃらけていないというか、「『ふざけた』設定を大真面目で演じている、というよりそれが彼女らが選び取った人生であり日常である*1」点が、最大のミソなのだと思います。
加えて、著者のSM論も大真面目です。「SMのSはサービスのSだ。Mにその役割を演じさせてあげる点で、彼らに奉仕しているのだ」「Mが自分の恥ずかしい姿をさらけ出せるように、女王様としての立場を保ちながら相手を引き出す言葉をかけなければならない」「Mを面倒がっては負け」…。私は門外漢で須賀、まるでカウンセリングの極意を語っているかのような言葉が並びます。ある一定の役割関係の中で本音を引き出していく側面がカウンセリングにあるのだとすれば、もしかしたらSMというのはその典型的な実践でさえあるのかもしれません。著者がSM女王様として培ったSM論をそうした知見と融合させ、「SM療法」とでも呼ぶべき領域を開拓されていくことも、個人的には期待したいです。

*1:なのでこういう表現は彼女ら夫婦に対して極めて失礼にあたるわけです