かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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総選挙投票日を前に

明日は総選挙の投票日です。アジェンダとしては政権選択が主で、民主党アジェンダ・セッティングが優れていた、というより与党の政権担当能力のなさが否応なく政権選択を争点にしてしまった、と言った方が適切でしょう。ここでいくつかの論点について、ちょっとずつコメントをしていきたいと思います。

衆議院総選挙

情勢報道と投票行動

まずは選挙情勢について。各メディアが情勢分析ということで「民主党300議席」だとか「民主党が3分の2か」などと報じていましたが、報道を見る限り割と終盤までこの情勢は動いていないようです。たいていそういう報道が出ると「自民党にお灸を据えようとしていた有権者が寝てしまう*1」、あるいは「反自民票が民主に集まらない」という危惧を民主党サイドはしなければならなくなるので須賀、終盤にもそういう結果が出ているということは、そこまで大きな揺り戻しはない、ということになるのでしょうか。
ただ個人的には、今回は政権交代すべきと考えている方でも、特に比例に関しては勝ち馬に乗ることを考えずに、自分が一番大事だと思う部分で共感できる人たちに一票を投じるというのでもいいと思うんですよね。民主党は政策的に幅広くて、しかも小選挙区には民主党候補は当然一人しかいませんので、何かこれは、という問題意識を持っている人はそれに基づいて入れた方が選挙後に有効な一票になるのではないかと思います。これまで国政では「自民党にもっともダメージの大きい投票行動」を取ってきたので須賀、今回はちょろっとやってこようかなと思っています。
ちなみに「マスコミが情勢報道すると投票行動に影響する*2ではないか!」というお叱りを時々いただくので須賀、それ自体の何が悪いのか私にはよくわかりません。それが政治的意図に基づかない分析である以上は、あるいは前述の私の考えを拙い一例に、有権者が報道された情勢分析を参考にして、自分の一票をよりよく行使するために投票先を考えることはむしろ当然で、有権者に判断材料を提供するというのが、そもそも報道の使命であります。別に民主党のためにやってるわけでも、その逆でもありません。まぁ報道による影響を踏まえ、意図的に数字を上下させるようなことは当然あってはなりませんが。

政策と論争

こっちは簡単にいきたいんで須賀(笑)、よく言われているように、なんか自民党民主党マニフェストで「価格競争」をやっているのはかなり見苦しいですよね。バナナの叩き売りではあるまいし、「子育て支援」の美名のもとにバラマキ競争をすることは、決して「マニフェスト選挙の政策論争」なんかじゃないとは言っておきたいです。むしろ問うべきは、例えば民主党案では、子育てを終えた家庭や子供のいない家庭、そもそも独身の人達は支援の枠外に置かれるわけで、そういったこと、つまり限られた国家予算で特定の人達だけを支援する=特定の人達に割を食ってもらうことにするという政治判断の是非について論じてこそ、政策論争と呼ばれるべきなんだと思います。最近の、少子・高齢化対策→「○人産んだら○万円!」の子育て支援みたいな流れが、戦前の「産めよ殖やせよ」的な、個人の多様な人生設計・ライフスタイルに対する不寛容につながることを私は強く懸念しています。
さて、29日には各党の党首が最後の訴えに声を枯らせました。東京・池袋駅前で演説した麻生首相は「政局より暮らしを守り経済・景気対策を優先すべきだと確信し、いろいろな対策をやってきた。日本の未来を成長させ、発展させていくのは自公連立政権。日本の未来に麻生太郎は責任を取ります」*3と訴えたそうです。

7月失業率、過去最悪の5.7%=求人倍率0.42倍で最低更新
総務省が28日発表した労働力調査によると、7月の完全失業率(季節調整値)は前月比0.3ポイント悪化し、過去最悪の5.7%となった。失業率の上昇は6カ月連続。一方、厚生労働省が同日発表した7月の有効求人倍率(同)は、前月を0.01ポイント下回る0.42倍で、3カ月連続で過去最低を更新した。失業率はこれまで、「ITバブル」崩壊後の2002年6、8月、03年4月の5.5%が最も高かった。
今回の景気悪化局面で失業率は半年間に1.6ポイント上昇し、急激な悪化ぶりが際立つ。来年にかけ一層上昇するとの見方が強く、6%台に乗る可能性もある。衆院選後の次期政権にとって雇用問題は最重要課題の一つになる。
失業率を性別にみると、男性は前月比0.4ポイント上昇して6.1%と初の6%台になった。女性は5.1%で0.1ポイントアップした。
完全失業者数は、前年同月比103万人増の359万人で、増加幅が初めて100万人を超えた。このうち、倒産や人員整理、雇用契約満了など「非自発的な理由」による失業者は、過去最大の163万人だった。(8月28日、時事通信)

最高裁判所裁判官の国民審査

…そんなこんなで、みなさんさまざまな思いを抱いて投票する一票。これが全く平等になっていないこと、それを司法がしっかりチェックできていないことは、国民審査に臨む私たちの一つの指針になるのではないでしょうか。
一人一票実現国民会議
住んでいる場所によって参政権の基礎たる一票の重みが2倍以上違うことに、何の合理的理由があるというのでしょうか。差別以外の何物でもないと思います。「地方への配慮」という言い方がされることもありま須賀、そもそもそれが建前であっても、国会議員はその地域でなく全体の奉仕者であり、また「地方への配慮」という一つの政治的立場から発する判断が、参政権の平等という原理を凌駕するとは到底考えられません。それは平等な選挙を経た政府や議会が考えるべきことでしょう。もっと言えば、「地方への配慮」という特定の政治的立場から支持を集め、歴史的に権力を得てきたのが他ならぬ自民党なわけです。
ですからと言うべきかしかしと言うべきか、今の不平等な選挙制度に立脚している政府や議会が、自発的にそれを改めようとすることは容易ではありません。むしろそこは法の番人である司法の出番のはずです。じゃあ最高裁はその役目を十分に果たしているか…。
裁判官を評価するのに、様々な論点があろうかと思います。その中の一つの論点として、一人ひとりの一票がいつにない重みを持つはずのこの選挙で、考えてみてもいいんじゃないかと考えています。
ちなみに「最高裁の裁判官なんか知らないよ。×をつけるだけの制度じゃ意味ないし、要らない」という主張は明らかな責任転嫁であり、またそれはマスコミの重大な怠慢をも明らかにしていると思います。テレビは酒井法子覚せい剤云々を垂れ流す暇があったら、各判事の経歴や主な判決を紹介した方がずっとずっとためになると思いますけどね。記入方式の問題も一方でありま須賀、それはとりあえずは別の問題です。

*1:=自分が行かなくても自民党は負けると思って投票に行かない

*2:たとえば具体的には「民主党に不利になる」

*3:毎日新聞より