- 作者: 福原直樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/03/01
- メディア: 新書
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ただね、ちょっといいですか(ry ここで顕在化しているスイスの「黒さ」を振り返ってみると、ただの「悪い国」の悪行というだけでは掬いきれない意味があると思うんですね。それを評価すべきかという問題は別として、スイスがマネーロンダリングの温床になっている背景にあるのは、預金者の秘密を守る意識と、国家が国民を拘束しない=国民の「税金申告忘れ」を重く罰しないという主義であり、麻薬中毒者に麻薬を与えるのも、麻薬常用者は社会環境の被害者だという考え方*1からきているものです。もっと言えば、移民の帰化への住民投票や第二次世界大戦期のユダヤ人入国制限などの排外主義にも、誰が自分たちのメンバーたるかは自分たちで決める、という意識が潜んでいる、と言うことはできるでしょう。その意味で、本当にざっくり言ってしまえば「スイスの暗部」ではなく、「スイスの原理主義性」みたいな部分を強く感じた一冊でありました。
*1:そう著者自身が述べているので須賀、その次のページで「勝手に麻薬に手を出した人間を民主社会がどの程度受け入れるべきか」という話になっているのはよくわかりませんでした