- 作者: 吉本ばなな
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/06/28
- メディア: 文庫
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彼女の小説を読んでいると、オルセーに行った時のこと*2を思い出します。まだその話をここに書いていないのでそのまま突っ走るのも気が引けるので須賀、オルセーで感じたこと、名だたる作品群を目の前にして得た、芸術って「いい」かどうかじゃなくてわかるかわからないかだよな、という格率(笑)が、ふと蘇ったのでした。何が言いたいかというと、彼女の感性結構わかるわ、ということです。私は昔から小説の風景描写が好きではなくて、雰囲気だけ読み取って流すことが多かったので須賀、今回はほとんどちゃんと味わって読みました。加えて心情描写、ものによってはどういう状態を描写しているのか、何度か読んで自分の頭の中で再現してみる、なんてこともしていた*3ので須賀、これらの作品の描写は、一回その文字を見るだけでその心情を追体験できる(気がする)のです。例えばこんな表現、死を悟った病人が、病室にあったパイナップルを持ち帰るよう頼むシーンなので須賀、
…南から来た明るい植物に、死がしみ込む前に持って帰ってって泣いて頼むのよ。
これなんかはちょっとゾクゾクしましたね。即座に栞を挟みました。そういう「わかるわかる」の体験を、より多くさせてくれた一冊だったように思います。