宇宙人としての生き方―アストロバイオロジーへの招待― (岩波新書)
- 作者: 松井孝典
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/05/20
- メディア: 新書
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したがって、二十世紀の思考法や価値観、概念、制度などをもとに二一世紀を考えることは人間圏にとっては自殺行為です。極端にいうと、民主主義や市場主義経済、人権、愛、神、貨幣など、二十世紀的な枠組の中で確立してきたいろいろな概念とか制度をもとに二一世紀を考えたら、必ず破綻するともいえるのです。(p78)
ここに二分法の最たるものを見たような気がするのは気のせいでしょうか。そしてその二分法のおかげて、あらぬものまでが「二十世紀的な枠組」に放り込まれてしまっています。
これまでの歴史が発展だと考えるなら、それは分化するのがその方向性だといえます。すなわち、歴史に基づいて未来を考えれば、未来の方向性は分化する方向だといえます。(p186)
これに先立つ6章に、地球は5億年もすれば生物圏を維持できなくなり、最後は赤色巨星化した太陽に飲み込まれるって言ってませんでしたっけ?それは分化です、か?
一年間に人間圏に流入する物質の移動量は、地球システムの物の流れに換算すると一〇万年分くらいの移動量に相当します。(中略)我々が今の割合でオーストラリアの鉄鉱石全部を日本に持ってくるのに、例えば数百年かかるとして一方*1は数千万年ですから…(p189)
「例えば」って何だよww根拠のない数字から求めた結果をあちこちで使うのはやめましょう。
私は個人的には、我々は宇宙を認識するために人間圏を築いたと考えています。単に、生き延びるために生きているわけではないと思っています。生き延びるために生きているのなら、人間圏をつくらずに生物圏の中の種の一つとして生きているほうが、選択としては正しいからです。(p211)
それは「特定の誰か」が意思的に選択したことなんでしょうか? あるいは一般意思めいたものを想定しているのでしょうか… ちなみに彼にとって「人間圏をつくる」とは具体的には農耕牧畜を始めることで、地球システム内の構成要素とその関係性を変えることを指します。でもそれってそれこそより多く「生き延びるために」やったことなんじゃないんですかねぇ?*2
…いやはや。ちなみにこの本と私との出会いには母親とその知人が深く介在していたということと、この本は文明論チックにではなく、地学(地球科学)の関連書として読めば勉強になるということは付記しておきます。
*1:プレートテクトニクスによってオーストラリア大陸が日本列島に衝突することを指します
*2:これは論理破綻とはちょっと違いましたね(汗