- 作者: ジョセフ・S・ナイ,山岡洋一
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2004/09/14
- メディア: 単行本
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読んでみて感じたのは、ジョセフ・ナイという学者の学者としてのバランス感覚の強さ*2でした。まず何よりもハードパワーとソフトパワーのバランスによる「スマートパワー」の実現を訴え、どちらか一方に偏る議論を排していることです。彼がソフトパワーの提唱者でありながら、同時に両者のバランスを説いていることを見逃してはならないと思います。またブッシュ政権の政策についても、以上のような立場を踏まえながらあくまでも是々非々で、彼らの言動を冷静に腑分けしながら論じているところはさすが学者というべきか、優れたバランス感覚の持ち主であることを感じさせました。
そして最後に、文化交流*3による価値観の浸透、といった議論の中にもそれを感じさせる余地はあったように思います。彼はそういった議論においては文化帝国主義的というか、「アメリカ文化の輸出がアメリカへの好感度アップやアメリカ的価値の浸透にプラスになる」という認識を原則として話を進めている*4ので須賀、一方で「同じメッセージでも、受け手が違う状況が違えば、違った形で『ダウンロード』され解釈されて、影響も違ってくる」という留保もちゃんとつけているんですね。まぁこれは本の中では好感度調査の結果統計をもとに導かれている議論なので、彼がどこまでメディア論的な知見を踏まえて言っているのかは分かりませんが、そのあたりの問題意識をも組み込んでいける*5というのは評価できると思います。こう見ていくと、何かジョセフ・ナイという学者の存在の重みみたいなものを感じますね。
…なんか褒めちぎりすぎたようなのでこの辺で。ややアメリカ的価値に楽観的な印象、とか多少の文句はありま須賀、そこばかり突くのもバランスを欠いている(←wwwwww)気がするので、とりあえずのレビューとしてはこれでよしとしておきますwww