- 作者: ドミートリー・トレーニン,河東哲夫,湯浅剛,小泉悠
- 出版社/メーカー: 作品社
- 発売日: 2012/03/16
- メディア: 単行本
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その中で最も印象深かったのは、ソ連―ロシア指導部の最大の正統性は、20世紀最凶最悪の軍事組織たるナチスドイツを破ったことにあり、それがために日本では「粛清」の代名詞とも言うべきスターリン*3に対してですら、世論調査で「ロシアの歴史に対する「貢献」を肯定的に捉えている」との回答が約半数に上っている*4点です。第二次世界大戦の勝利が彼らの拠って立つレゾン・デートルであるなら、日本に引きつけて言えば、その戦勝によって得た領土を譲り渡すのはそもそも至難の業であることが容易に想像できます。それでも、ロシアが「帝国」ではなく利己的(それは合理的とも解釈できるでしょう)に行動する「大国」を志向するなら、訳者の言うとおり、「自分の利益になる協力は進める一方、北方領土問題を解決しないとロシアにとってもマイナスであることを意識させる局面を、感情的にではなく落ち着いて作り、かつ維持していくことが得策」でしょうし、さらに言えば、日本こそ「強大な敵性国家」の如き冷戦時代のイメージを払拭し、「北方領土を解決することで得る日本外交上のプラス」を享受する*5発想をもっと持ってもよいのではないかと思います。