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一方で幕末に生を受け、言うまでもなく「激動の明治」に君臨した人物でありますので、(たとえ望む分だけ史料があろうとも)幕末・明治史と乖離した伝記には当然なり得ません。そこの書き分けも難しかったのではないかと思いま須賀、政治や社会の流れを人間・睦仁を取り巻く環境の変化やその言動にうまく流し込むことで、ここでも伝記たるラインを守り切っています。逆に言うと、「日本の歴史・明治時代編」のつもりでは読まない方がいいと思います*1。
読み進める中で個人的に最も興味があったのは、明治天皇自身が政治的決断を行うシーンがどのくらい出てくるのか、ということでした。昭和天皇だと2・26事件と終戦の決断あたりを挙げるのが標準的なようで須賀、大日本帝国憲法下の初代立憲君主たる明治天皇ではどうだったのか。結論から言うと結構そういう事案はあって、政策判断では1880年の外債募集中止や1893年の政府と議会の対立裁定といった例が挙げられますし、首相や閣僚人事については、(その意思が通らないケースもままあるものの)隈板内閣成立時などの政局では少なからず見解を表明しています。著者もこうした「天皇の判断」が一般に言われている以上には多いことに注意を促していま須賀、恐らくこれは、少なくとも昭和天皇との比較においては、建前としての制度が定着(悪く言えば硬直化)していない半面、伊藤博文ら政治の中枢にいる人物らとの個人的紐帯が強かったことから理解できるのだろうと思います。
文庫版だと4冊で計約2000ページという大作でもありますので、私のような下手くそがここであんまりこねくり回すと良書の読者を減らす結果になるかもしれません。しばしば私がそうしてきて、そして今もまたそうであるように、ビールやワインとチーズを片手に読んでも十分楽しめる本だと思います。もしかしたら明治天皇自身も、お酒と一緒に読まれるというのは満更でもない…かもしれませんし。