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取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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金賢姫訪日への雑感@当直中

金賢姫元死刑囚 田口さん絶対生きている…長男らと面会
初来日した北朝鮮の元工作員金賢姫(キム・ヒョンヒ)元死刑囚(48)が20日、拉致被害者田口八重子さん(行方不明時22歳)の長男、飯塚耕一郎さん(33)と兄で拉致被害者家族会代表の飯塚繁雄さん(72)と、長野県軽井沢町鳩山由紀夫前首相の別荘で面会した。昨年3月に韓国で初めて会って以来の再会。繁雄さんは会見で「金さんは改めて『(田口さんは)絶対生きている。そのうち帰ってくる』と言ってくれた。大事な生き証人として今後も(交流を)つなげていきたい」と述べた。【合田月美、袴田貴行】
耕一郎さんと繁雄さんによると、面会は午後3時45分から夕食をはさみ約2時間。白いブラウスと黒のスラックス姿の金元死刑囚は、前回同様に健康そうだったが「23年ぶりの国外に気持ちが高ぶって前夜は眠れなかった」と話し、少し疲れた様子だったという。
金元死刑囚は「この席に八重子さんがいたらどんなにいいか」と話し、さらに「八重子さんは帰ってくる」と繰り返し、励ましたという。繁雄さんが持参した田口さんの兄弟らの写真を見て「目が八重子さんにそっくり」と目を真っ赤にする場面もあったという。
繁雄さんは「北朝鮮のやり方を知っている人がそうはっきり発言したことに、改めて強い期待を感じた」と語った。
耕一郎さんは「初めて会った時より大分穏やかな形で話ができた。今後も話をしながら交流を深めたい」と期待を込めた。
また金元死刑囚は北朝鮮との交渉について「北朝鮮の意思を尊重した上で、プライドを傷つけないよう話をしていかないと解決にはつながらない」などと考えを語ったという。
食事は出前のすしで、田口さんの3番目の兄(66)らも同席。金元死刑囚は日本について「飛行機の上からネオンや街灯がすごくて驚いた。軽井沢は静かでいいところですね」と話したという。
耕一郎さんらは21日も金元死刑囚と面会する。面会の様子は写真で撮影され、政府は後日公表する考えだ。
◇金元死刑囚の供述で田口さん拉致が判明
田口八重子さんは東京都豊島区の飲食店従業員だった78年6月、当時1歳だった耕一郎さんら2人の子供を託児所に預けたまま行方不明になった。北朝鮮による拉致と分かったのは、大韓航空機事件の実行役として逮捕された金元死刑囚の供述によってだった。金元死刑囚は事件後、「工作員訓練中の81〜83年、李恩恵(リ・ウネ)という日本人女性と一緒に暮らし日本語などを習った」と供述。警察庁は91年、李恩恵を田口さんと断定した。
北朝鮮の説明によると、田口さんが金元死刑囚と同居していた81〜83年、横田めぐみさんとも同居し、84年10月に拉致被害者の原敕晁さんと結婚。原さんが病死した86年7月に田口さんも交通事故死した。遺体は95年の豪雨で流失したという。
だが帰国した拉致被害者らによると、田口さんは86年7月までは独身。結婚相手も韓国人と聞いていた。金元死刑囚も昨年、釜山市での会見などで「87年1〜10月に拉致された日本人の誰かが死亡したとは聞いていない」と話している。
(7月20日毎日新聞

個人的には金賢姫という人には非常に興味があるので須賀、この訪日の狙いは何なんだろうか、彼女がいま日本に来ることで、誰がどんな利益を得るのだろうか、などと考えてみるわけです。
まず拉致被害者の関係者の方々にとっては、金賢姫という「一世を風靡した」有名人が来て拉致問題について言及することは、遠のきつつある世論の関心を喚起するカンフル剤になりうる、という期待があるでしょう。また、日本政府としては、その点も含めて拉致問題に取り組む姿勢をアピールできるということでしょうか。翻って韓国政府ですが、北朝鮮の関与が疑われる哨戒船沈没問題に関して国際世論の支援がほしいという前提、さらには日本政府がその役目を少なからず果たしている現状を考えると、今回の訪日がその共同歩調と連動している可能性は想像できるように思います。
北朝鮮の意思を尊重した上で、プライドを傷つけないよう話をしていかないと解決にはつながらない」という言葉は、彼女一人の見解にとどまらず、その意味で彼女は結果的に、日本世論や拉致被害者関係者らに対する何者かのメッセンジャーとしての役割を、期せずして果たすことを期待されているのではないか、と考える人もいるようで須賀、もしそうだとして効果の程はどうでしょうか。そう考えるとやや疑問ではあります。
また、当然ながら彼女は大韓航空機爆破事件以降、北朝鮮を離れているわけですから、今回の訪日で拉致事件に関する事実の解明が大きく進むとはあまり考えられません。その意味では、日本の世論や東アジアをめぐる外交関係の中でこの訪日を捉えるのがよいのかな、と今は感じています。
ちなみに『いま、女として―金賢姫全告白』のレビューなんてのもありました。