かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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「中国製」を考える

<中国製ギョーザ>袋内から殺虫剤検出 中国での混入確実に
中国製冷凍ギョーザの中毒事件で兵庫県警は7日、大阪府枚方市の小売店から返品された冷凍ギョーザ11袋のうち新たに2袋から、有機リン系殺虫剤メタミドホスを検出したと発表した。ともに未開封で、1袋はパッケージの外側だけに付着。もう1袋は内側からも検出し、パッケージに穴はなかった。一連の事件で、完全に密封状態のパッケージの内側からメタミドホスを検出したのは初めて。中国での製造過程で混入したことが確実になった。 
枚方市のスーパー「ハッピース枚方」が昨年12月28日、「外側がベトッとしている」として輸入元のジェイティフーズ大阪支店に返品した「中華deごちそう ひとくち餃子」11袋のうちの2袋。
輸入商社の双日食料(東京都港区)が1月9日、民間検査機関に検査を依頼。検査機関は開封せずに外側だけを調べ、同18日に「リンの成分を検出」と報告した。兵庫県高砂市の事件のギョーザと同一製造日(昨年10月1日)のため、同県警が今月4日に回収し、鑑定していた。
その結果、2袋とも外側からメタミドホスを検出。密封状態の1袋は内側からも検出した。外側のみ検出した袋は、表側の下部に直径0.2ミリ程度の穴が開いていた。2袋ともギョーザやトレーからは検出しなかった。
11袋のうち、他の6袋からは県警が既に外側などからメタミドホスを検出。うち1袋は内側から検出していたが、袋に微細な傷があり、外側から内部に入った可能性があった。残り3袋はジェイティフーズなどが検査のために中身を食べ、パッケージは1袋分を廃棄、2袋分は中国の天洋食品に送り返した。
県警は6日までに、高砂市の事件の冷凍ギョーザと同じ製造日の133袋を回収。17袋の鑑定を終えた。メタミドホスが検出された冷凍ギョーザは、千葉県内の2袋を含め全国で計11袋となった。【武内彩】
  ◇  ◇
パッケージを製造した中国・江蘇省の「東洋制袋(蘇州)有限公司」の親会社「東タイ」(東京都台東区)は「パッケージはポリプロピレン製の2層構造で、厚さは約0.05ミリ。透過実験はしたことはないが、メタミドホスがどんな状態であっても、パッケージに穴や傷でもない限り、外側から内側に入ることは考えにくい」と話している。 (2月7日、毎日新聞)

このニュースも連日大きく扱われていま須賀、ここにきてやっと憶測ではない形で事件の概要が見えてきましたね。事実関係については日本当局が殺人未遂事件として捜査を進めている*1ことを含めて、今後の進展に注目したいと思います。
ただ昨日言いたかった今日言いたいのはそうではなくて、この一連の事件に関するリアクションについてなんですね。やっぱりテレビのワイドショー*2やらmixiニュースのリアクションやらを見ていると、「やっぱり危ない中国食品!」みたいな話になってることが多いんで須賀、そこはちょっと冷静になったほうがいいと思うんですね。こうして明らかになりつつある今回の事件の顛末から、どのレベルにリスクがあって、どのレベルでその回避に失敗したのかを冷静に腑分けしていく必要があるのではないでしょうか。
例えば今問題になっているのは天洋食品という一食品会社の製品の問題であって、少なくとも現時点では中国のあちこちの食品工場の製品からメタミドホスが検出されているわけではないですよね。であれば、これは第一義的には一企業レベルの問題であると言うのが妥当ということになります。その意味では赤福と同じです。
しかしその一方で、中国における食品安全に関する法整備の問題や、ざっくり言えば国民性や安全意識の問題を挙げて、「中国」という国家のレベルでこの問題を考えるアプローチを主張する人もいると思います、っていうかむしろそれが主流でしょう。そしてその見方に一定の妥当性があることにも私は同意します。ただその場合に、実際に中国でどのような法規制がなされているのかについてちゃんと見てから判断することになりますし、「上に政策あれば下に対策あり」と言われる国ですから、地方政府の法制やその運用実態まで視野に入れねばなりません。
更に言えば今回の事件で、ギョーザやら何やらの冷凍加工食品類には基本的に水際での成分検査はしない、ということも周知の事実となりました。であればそのレベルで、「水際の安全検査をしない以上、外国製品には一定の危険性がある」とも言える。となれば「じゃあ国内製品だって安全なの?」というレベルにまで達しうるわけですね。
このようにざっと見ただけでも、このギョーザの問題についてどのレベルの要因が大きくて、それをどのレベルで教訓にしていくべきかについて、様々な検討がなされるべきであることが見えたのではないかと思います。ですからただ短絡的に「Made in China」を避けるという判断が必要十分なのかはまだ疑問に思っていますし、じゃあと言って全く気にせず食べ続けることにもリスクはあるでしょう。ただ一つ、一番言いたかったのは、食品に限らず様々な「Made in China」に囲まれて生活している私たちが、冷静な判断によってではなく感情的なラベリングによって、「中国製品=悪」と決め付けてしまうのは決して得策ではないのではないか、ということです。

*1:ここにエクスキューズの脚注をつけられないっていうのは記者をやる人にとって致命的だと思うんで須賀、もちろん当局が言えばその通りだなんてことには決してなりません(笑)

*2:実はそこまで見てないですけどね、BS見てるからww