かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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一年記者をやってみて

例えば「こうして一年働いてきた自分とその環境は、一年前に想像した通りだったろうか?」というまぁありがちな問いを投げかけるとするならば、それは明らかに、大きくNOだと言えるでしょう。そりゃあマスメディアの現場やそれを分析する立場にいる諸先輩に恵まれ、学生にしてはそれなりのことを知っている方だったのでしょうが、まさかそんなレベルで分かったような気になれる世界ではありません、とこの一年の経験だけでも言い切れると思います。大体が事件の思い出ですけどねww
そんな一年を振り返ってみて思ったことは、恐らく記者に限らずどんな仕事でも、あるいはどんな事柄でも、それに直面しなければならないという状況に否応なく置かれることは、(多くが自分にとって意外な)自分の特徴を発見することにつながる、ということです。目の前にあるものに対してどういう行動をとる傾向があるかが分かってくれば、自分の性質について言えることも増えるだろう、というのは安易ながら的外れではないと思います。まず自分に関して言えるのは、これは昔から言ったり言われたりしていたことなので須賀、私はどうやら頭の切り替えが上手い方ではないらしく、それによってか往々にして仕事の能率が低いようだということです。結構一つのことにはまり込んでしまうとやめられない部分があって(信長の野望w)、原稿を書いていてもスイッチが入ると細部に延々とこだわり続け、あっという間に時間が過ぎてしまう。また、他の取材中に「事件だ、走れ!」と言われるのがこの上ないストレスで、恐らくそれで極度にイラついている私は周囲からグズグズしているようにしか見えなかったでしょう。しかし、ある種のジェネラリストというか、何でも屋であることを求められる記者の仕事、そして今の自分の職場ということを考えるとこれは由々しき事態です。
なんかくどくど書くのが情けなくなってきたので次に一番大事なポイントをいくと、私は自分が思っていたほど、個別具体的な生身の人間に対して興味を持っていないのかもしれないということです。記者仲間や先輩の中には、取材対象者(取材で話を伺う方)に共感し感動し、懐深く入り込むような取材を得意とする人も多いので須賀、地域に根を張った取材をすることが求められる立場にいる当の私に、それがなかなかできない。もちろん一年もやれば「記事として面白く紹介できるのではないか」という頭はそれなりに働くので須賀、お話を伺っているその頭の中で一歩引いている*1というか、極端に言えば「まあ典型的ないい話だよね、で?」に近い感想を抱いてしまうことも正直言ってあります*2。経緯はどうあれ相手の時間を割いてもらって話を聞いているわけで、もちろんそんな失礼なことは言いませんし言うべきとも思わないので須賀、かといって「純粋に面白いと思える取材以外引き受けるな」という理想論(本当にそれは理想だと思います)は組織の中で毎日紙面という商品を供給する立場上難しい。そういう取材を重ねるたびに、「じゃあ他にどんなことに興味があるというんだ」「実は自分は何にも興味がないのではないか」と煩悶した時期があり、それも8割方割り切ってここまで来ているのが現状です。高杉晋作の辞世の句は、私は座右の銘としたいくらい好きなので須賀、それは言うほど簡単なことではありません。「『楽しいから』なんてことでは記者は務まらない。人間同士のドロドロした部分に興味がないとダメだ。ま、興味ないかwww」と言われた言葉は、こうやって仕事を続けるほど深く突き刺さってきます。
こうやって書いていくだけでも、気分屋の私の気分は沈んでいきますww 今週の月曜日の朝、自分を趣味人か何かだと勘違いして「早く週末になれ」と念じている自分を発見し、「一週間の、いや今の自分の生活のメインであるはずの仕事が、自分はそんなに嫌なのだろうか」「いつまで街ダネのノルマに追われ続けなければならないのだろうか」と、暗澹たる気持ちで一日を過ごしたことすら思い出されます。本当は私はこのブログで、真面目な話も不真面目な話も、悪意がなければネタ的コメントの応酬も…とワイワイやって、自分の考えを整理しながら知的な刺激を得ていきたいと、極めて明るい希望(笑)を持っているので須賀、こんなネガティブトーンで長文を書く行為はその180度逆を行っていますよねorz でも「まだまだ仕事にも慣れませんで」と言えなくなったどこかの時点で、これまでの記者生活を振り返ることは必要だろうと思い、この記事を全消去しようという衝動を何度かこらえています。最後まで読んでしまった方、付き合わせてしまってすみません。
…なんか仕事を辞める人の文章みたいになってしまいましたが、現時点ではいついつ辞めてやろうとか、そういうことは考えていません。最初の一年が入社前からは想像できないほどの経験をくれるのはそう珍しいことではないにせよ、どうやら気後れ癖も一緒にもらってきてしまった私。二年目、と限定せずそろそろ、じゃあ自分は広い意味で何に興味があるのか、面白がってしり込みせずに、できることから朝鮮していきたいと思っています。

*1:斜に構えているというよりはこっちの表現です

*2:もちろんそうでないのも多くあります