かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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笑点流「エジプト情勢」

門外漢ながらもエジプト情勢についてちょっとだけ。

イスラエルとの平和条約破棄」=新政権主導へ意欲―エジプト・ムスリム同胞団
【カイロ時事】エジプト最大のイスラム原理主義勢力、ムスリム同胞団の最高幹部の一人でカイロ大学教授のラシャド・バイユーミ氏は2日までに、ムバラク大統領退陣後の政権で主導権を握ることに強い意欲を示し、エジプトが1979年にイスラエルと締結した平和条約を破棄するほか、米国の援助拒否、シャリア(イスラム法)導入など、政策の抜本的修正を目指す意向を表明した。バイユーミ氏は同胞団内で最高指導者に次ぐ幹部3人の1人。時事通信のインタビューに対し、同胞団の一致した見解として明らかにした。
欧米諸国は親米ムバラク政権の退陣後のイスラム勢力台頭を懸念しており、バイユーミ氏の発言は欧米側を一層警戒させる材料になりそうだ。
同氏は「最高憲法裁判所長官と協議し、暫定政権を設け、民主選挙を容認する憲法改正などを経た後、大統領選や議会選に候補を立てる」と言明。改憲については、大統領再選回数の制限のほか、宗教政党容認、シャリアに基づく犯罪処罰規則の導入を求める考えを示した。
さらに、イスラエルとの平和条約を「平和的な条約ではなく、エジプトにとって降伏条約だ」と批判。「新政権ではパレスチナ問題の解決が最重要外交課題になる」と語った。
米政府の巨額の対エジプト援助に関しては「米国は中東諸国を破壊する敵だ。援助を受ければ米国の意向に従う必要がある」とし、新政権入りすれば援助を拒否する姿勢を明確にした。ムスリム同胞団を弾圧してきたムバラク大統領については、退陣後に「不正蓄財や政治犯弾圧、デモ参加者殺害などの犯罪行為での訴追を求める」と述べた。
(2月3日、時事通信)

約30年間続いたムバラク政権が倒れることは、エジプトの人々のみならず、国際政治にとっても非常に重要な出来事です。
記事にあるようにアラブ諸国に先駆けてイスラエルと平和条約を結んだエジプトは、アメリカの中東戦略の中で重要な役割を演じてきたとされるアラブの大国です。そんな国の中に今、現在政権の座にあるのはムバラク大統領、彼に対し怒りの声を上げる市民、これまでの抑圧のうっ憤を晴らさんがごとく反旗を翻したムスリム同胞団、洞ヶ峠なのか何なのか中立を崩さない軍、国際的知名度を背景にこれらを糾合しようとするエルバラダイ氏…と、様々な勢力がそれぞれの意図や信念を持って割拠しています。これが今後どうなっていくか。指摘されているように、この地域大国に「ムバラク後」のはっきりした展望がないということが、国際社会の大きな懸念の一つでしょう。
その意味で重要性を持つのが、上の記事です。イスラームの団体としては比較的穏健とされてきたムスリム同胞団の最高幹部の一人が、イスラエルとの平和条約拒否やアメリカの援助拒否を明言したということは影響大でしょう。もちろん、これがムスリム同胞団の統一見解であり、既定方針であると信じ込むのは早計で生姜、いずれにせよこういう発言が表に出てきたということは一定の重要性を持つと思います。アメリカが彼らと接触しているなんて話も出ていますが、そんなに話がすんなりいくかどうかは分かりません。
転じて日本のメディアでは、エルバラダイ氏を軸にという観測がなんとなく流れているようにも感じます。少なくとも本人の動きをみているとやる気満々のようですね(笑) 国内的な支持には疑問符が付くようで須賀、もし国際世論が前IAEA事務局長の彼を後押しし、今後指導的立場に立つことになった場合、一番皮肉なのは「話のわかるエジプト」を一番望んでいるのがイスラエルであるということではないでしょうか。
何やらグダグダ述べてきましたが、このエントリにはいつも以上に「筆者の主張」というものが入っていません。ここまでアメリカとイスラエルの立場に関する憶測を並べ立ててきた私があえて一つ言うとすれば、今回の主役は、エジプトの人たちだということです。グローバル化もインターナショナル化も進む現在、国際世論*1を完全に無視した政権や国家統治のあり方は、私は望ましくないと思っています。しかし、声の大きなどこかの外国にとってただ都合のいいだけの人間*2ムバラク氏の後釜に座ることでは、この混乱は収拾できないでしょう。9月までの暫定政権と言っても、誰がやっても同じということには当然ならないでしょうから。
笑点流に言えば、司会のオバ丸さんは、回答者のムバ楽さんの座布団を全部持って行ってしまいたいと思っているようです。しかし、現実に彼が慎重な言い回しで避けているように、「山田くん、ムバ楽さんの座布団全部持って行って!」とやってしまうのは好ましくないでしょう。それがどんな人たちになるのかは前述の通り見通せませんが、エジプト国内にいる「山田くん」が、自分の意志でムバ楽さんを背後から突き飛ばし、座布団を持って行くさまを、第一義的には見守っていくということなんだと思います。*3
最後になりま須賀、国内での流血のニュースも多々聞こえてくるようになりました。願わくば少しでも平和的に、混乱が収束することを期待しています。

*1:これが誰の声であるかは大きな問題です

*2:この物言いで暗に特定の人物を指弾できるほどアラブ諸国の情勢には詳しくありません

*3:この比喩は知人のツイートに大きな示唆を受けています