- 作者: 六辻彰二
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2011/09/29
- メディア: 新書
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その中には、知名度のあるなしに関わらずアフリカの政治指導者が多く、彼らやその国を取り巻く国際情勢を見ていくと、いかに欧米諸国の人権外交が機会主義的であるかがよく分かります。昨今はスーダンの問題などで「資源欲しさに人権軽視の政権を躊躇なく支援する中国」が槍玉に挙げられるケースがありま須賀、それを批判するスタンスのはずの国々もこっそり、事実上似たようなこと
あとちょっと違和感があったのは、「特定の人物による独裁」と「特定の政治勢力による独裁」の区別の部分です。例えばカダフィはリビアの大統領でも国王でもなく、今年に入って各方面からあがった「最高指導者の職を辞するべき」との要求に「オレは最高指導者なんて肩書は一切持ってない!オレは大佐だ!文句あるか!」と吠えたという話も伝わってくるように、制度的な立場を超えたところで政治的影響力を行使してきました*1。一方で、中国では共青団系から太子党系へと、異なる政治的出自を持つ人物への政権移譲が行われることがほぼ決まっており、毛沢東をそう呼ぶのはともかく、現在の中国の体制は「胡錦濤による独裁体制」ではなく「中国共産党による一党独裁体制」と呼ぶのがふさわしいはずです。そしてこのような差異の一つのメルクマールとなるのは、
著者もこのくらいのことは十分承知の上で書いているのでしょうし、「雑誌に載ってる上位のやつを引っ張ってきただけだもんね」と言われればそれまでなんで須賀、そこのところの区別も抑えた上でやってくれれば、よりすっきりすると思いました。
最後に言っておくと、この本の賞味期限はあまり長くありません。今年8月くらいまでの動向は盛り込まれていま須賀、すでにその先の展開が見えている国が多々あります。カダフィは完全に政権の座を追われてしまったようですし、チャベスに関しては健康不安説が囁かれるようになりました。ロシアの次の大統領選にはやはりプーチンが臨むとのことですし、この本にとって最も重大なのは、ミャンマーにおいて政治改革の動きが始まったように見えることです。本のレビューのオチではありませんが、このミャンマー情勢には最近非常に関心を持っておりまして、これがカレンなどの少数民族の立場にまで踏み込めるものなのか、引き続き注視したいと思っています。