かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
ブログランキング・にほんブログ村へ

簡単にする…はずだったのにw

天皇陛下、中国副主席と会見
天皇陛下は15日午前、皇居・宮殿「竹の間」で、中国の「次代のリーダー」とされる習近平国家副主席と会見された。
宮内庁によると、陛下は、習副主席に対し、昨年5月に起きた四川大地震へお見舞いの言葉を述べられ、副主席からは、即位20年を迎えた陛下への祝意とともに、「お忙しい中、機会を設けていただいて深く感謝を申し上げます」と謝意が示された。会見は24分間。
陛下と中国の首脳クラスとの会見は昨年5月に来日した胡錦濤国家主席以来。1998年には江沢民国家主席とも会見されている。
今回の会見を巡っては、外国要人との会見希望は1か月前までに宮内庁に申し込む、という政府慣行の期限を過ぎていたが、「日中関係は非常に重要」とする鳩山首相の指示を受け、特例的に実現した。
こうした経過について、羽毛田(はけた)信吾宮内庁長官は11日、天皇の政治利用の観点から特例扱いに懸念を表明。これに対し、鳩山首相が「政治利用には当たらず、問題ない」と発言し、首相官邸に会見実現を要請したとされる民主党小沢幹事長が「どうしても反対なら、辞表を出した後に言うべきだ」と激しく反発するなど異例の展開をたどっている。
(12月15日、読売新聞)

天皇陛下会見>小沢幹事長発言、さらに波紋
宮内庁の「1カ月ルール」の慣例を守らない特例となった天皇陛下と中国の習近平国家副主席の会見。陛下の「政治利用」を否定し、今回の会見を「天皇陛下の国事行為」と主張した民主党小沢一郎幹事長の発言がさらに波紋を広げている。
静岡福祉大学高橋紘教授(現代史皇室研究)は「外国要人との会見は、憲法が定める天皇陛下の国事行為に含まれていない。小沢幹事長の発言は『入り口論』から問題」と指摘。「内閣の助言と承認で行われるなら、勝手に何でもできてしまう」と批判した。また「天皇陛下のお体が優れないなら、優位性の低い行事はお休みになればいい」との発言に対しては、「順番付けを行うもので、まさしく政治利用だ」と話している。
一方、法政大の永井憲一名誉教授(憲法学)は「憲法7条には外国の大使、公使を接受することが国事行為として明記されており、外国の要人との会見を内閣が要請し天皇陛下が認めたならば問題はない。宮内庁長官1カ月ルールという内規から『いけない』と言うのももっともだが、その上位にある憲法上の問題はなく、内閣の判断を尊重すべきだ」と話している。
(12月15日、毎日新聞)

ホントはいろいろ書きたいので須賀、要旨だけ。「習氏の訪日の成否は、天皇会見が実現するかどうかにかかっている」との声が聞かれる中で、宮内庁の意向を押して*1日中関係は非常に重要」であるがゆえになされるこの会見は、間違いなく政権の強い政治的意図に基づくものだと言わなければなりません。
当然日本国憲法天皇に関する規定は、戦前の天皇への憲法上の権力集中に伴う弊害を反省し、国事行為の憲法上での限定列挙などをもって、天皇の行動を民主的正統性のある内閣の統制下に置くことを意図したもので、小沢さんが「助言と承認」と言っているのはそのことなのでしょう。これは文理的な解釈としては間違いではなく、2つ目の記事においても、法解釈としては後者の意見の方が妥当だと思います*2。ただ、この反省のもととなる戦前というのは、天皇の名のもとに悲惨な戦争の惨禍を招き、国内的にも政治的抑圧や人権侵害が横行したわけなんですけれども、特に昭和のある時期からは、天皇自身が政治的な意思表示を極力避けた*3こともあり、それこそ天皇の名のもとに、その威を借りる政治利用の側面が顕在化してきたわけです。現行憲法の立脚する反省がそのことをも含んでいるとすれば*4、「助言と承認」という内閣の権能を利用して、政治的意図に基づいて天皇と外国要人との会見を設定するという、政権による天皇の政治利用は明らかに望ましくないというのが私の意見です。
ただ、じゃあ例えばその「1カ月ルール」とやらを形式上守っていればその意味でも全く問題ないかというと、そうはならないと思います。今回はこの「ルール」に抵触したがゆえに顕在化したのであって、このような外交上の天皇の政治利用は程度の差こそあれ、過去にもあったのではないかと思ってしまいます。天皇と外国要人の会見に関するこの問題は、広く皇室外交のあり方というところまで含めて議論が必要なのではないでしょうか。
やはり話が天皇だと2〜3行ではすみませんねww 誤解を恐れて多弁になるというのは「炎上するメディア」としてのブログの特性のひとつかもしれません。え、私だけ?www

*1:宮内庁と対立したことや、「ルール」の妥当性についての是非ではなく、「政権が強い意図を持って行った」ことへの言及です

*2:法律専門の方ご教授下さい

*3:張作霖爆殺事件の際の、田中義一首相についての天皇自身の不信の言葉が田中内閣の総辞職を招いたことが、その契機だと言われていますよね

*4:私はそう思いま須賀