かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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  • 4限 国際法
  • 5限 情報生命論

5限は「科学技術が社会にどう受容され、どう信頼を勝ち得ていくか*1」とか「ネット上の情報の真偽をどう判断するか」とか「『ゲーム脳』はトンデモ本だ」とか面白い話が満載だったんで須賀途中退出。直前に友人に第三のビールを振舞われたというのは秘密の話www
その後は田中均の講演会でした。なんか外交官と大学教授という違いはありながらも、根っこにある部分は生姜先生に通じるものがある気がしましたね。そしてその詳細*2

私は日本と朝鮮半島の関係は日本外交の原点であり、そして外交の主要な要素を全て包含していると考え、担当部署への異動を申請した。当初は日韓関係にドライな合理性を持ち込もうとし、外交官同士の会話も英語で行おうとしたがこれは長続きしなかった。一方でこれまで日本には過去を見直すいとまがなかったという思いから、過去の問題*3で日本が能動的に動く一方、ソウル五輪での日韓警察間の協力や交流事業の増大といった未来志向の関係を築けるよう努力し、手ごたえを感じて一旦職を離れた。90年代には総務課長として再び朝鮮半島外交にかかわり、「村山談話」の作成も行ったが当時問題となっていた従軍慰安婦への国家による直接補償には反対した。歴史の問題についてはごまかさないことが重要である。3度目は2001年に当時の事務次官から「靖国参拝によって冷え込んだ日韓関係を修復してくれ」との要請があり、電撃的な韓国・中国訪問を設定した。これらに韓流ブームやワールドカップ日韓共催もあいまって、特に若い世代を中心に日韓友好の根っこのようなものはできてきていると思う。
確かに今、少なくとも表面的には友好的とは言い難い関係だが、今の韓国は軍政時代の歴史の掘り返しという言わば「ソウル・サーチング」を行っている最中*4であり、ナショナリズムが高揚しがちになるのもやむを得ないし、そもそも韓国は中国との「共闘」を望んでいないはずだ。またこのような状況に陥ったのは日朝関係が韓国に与える影響、つまり民族感情的なものによるところが大きいのであって、ノムヒョン大統領をただ反日的・反米的と理解すべきではない。ただ前述のとおり日韓関係が好転する根っこは確かに存在するのであり、①北朝鮮問題でのソフトランディングへの日本のコミットメントや、②東アジア共同体的な地域的枠組みの構築に成功すれば今後の日韓関係は修復し、また発展していくだろう。
ここで北朝鮮の問題に入りたい。私が朝鮮半島外交に関わるようになってから大韓航空機爆破事件、ミ・ホングさんの事件など北朝鮮をめぐる問題はいくつか起こったが、これらは日本の守りの弱さを示すものであった一方、補足的に言えば当時から北朝鮮に対する「対話と圧力」的*5な方針は不変であるということも言えるのだろう。また93〜94年の核危機がガイドラインにつながり、テポドン発射がMD構想につながっていることを考えると、北朝鮮が日本の安全保障を具体的なものにしていると言うことができるのかもしれない。
さて、このような北朝鮮に対して抑止を行うことは可能だが、これを外交的手段によって問題解決に導くのは容易なことではない。確かに一部には2002年の小泉訪朝および日朝平壌宣言を突然出てきたもののように言う向きがあるが、この批判は当たらない。時期に関しては「韓国の頭越しに交渉しない」という日朝交渉の大原則と、ブッシュ政権成立により態度を硬化させたアメリカに対する保険を欲した北朝鮮側との意図が合致した結果*6によるものであるし、内容についても拉致・核・国交正常化のそれぞれの問題について日本は原則を堅持しているのだ。交渉の際は軍事中心の政治体制をとる北朝鮮側がとる外交の戦術性には特に注意を払いつつも、軍事力以外の力*7の重要性をも重視した。
この問題の現状について言うなら、現在北朝鮮をめぐる問題は二国間・多国間ともに停滞していると言わざるを得ない。そしてそれを妥結すべき包括的な合意を取りまとめるためには、アメリカが北朝鮮と真剣に向き合い、交渉する必要がある。だがそれはアメリカ国内において北朝鮮に関する政策的対立が大きく、またそのプライオリティーが低い今、残念ながら大きな進展をみるとは考えにくい。そしてまた日本国内における北朝鮮への怒りのような感情は、時が経てば沈静化するというような性質のものではない可能性があり、それを抑えるためには外交交渉において結果を出すしかないのが現状だ。
とするならば、日本は自国の安寧のためにこの地域に安定した秩序をもたらす必要があると言えるだろう。戦争は計算違いで起きる。そして起きてしまってから間違いだったと言っても仕方がない部分がある。もちろん拉致の問題は大事だが、その世論に迎合してばかりではいけないのではないだろうか。

  • 質疑応答の一部*8

Q.「若い世代に日韓友好の根っこができている」一方で「嫌韓流」的な流れもあるが?
A.世論は政府の政策によって左右しうるものであり、両国には文化的類似性も大きいので心配はしていない
Q.竹島問題について?
A.領土問題は主権の根幹に関わる難しい問題だが、どちらかが一方的行動をとらない枠組を形成することが重要だろう。
Q.北朝鮮と交渉する際に特に注意したことは?
A.我々が見る世界と北朝鮮の人が見る世界が違うということだろう。彼らは簡単に言えば視野が狭く、それが戦争につながる計算間違いを生む可能性がある。また外交担当者も本国の意向ばかりを気にしているので、外交的成果を引き出すためには国家の中枢*9に働きかける必要がある。
Q.どうもK宮です*10。外交における官僚と政治家、あるいはマスコミの関係について?
A.昔は外交に自民党の有力政治家の許可が必要だったが、近年は外交における首相のイニシアティブが向上している。その中でプロフェッショナル・サーヴィスとして官僚に一定の保護を与える一方、ポピュリズムを排しながらも政治家の責任を拡大していくのが望ましい。

*1:もちろん主語を逆にすることもできるわけです

*2:努力はしましたがテープ起こしをしたわけでも速記をしたわけでもないので、表現や(もしかしたら)内容の正確さについて100%のものを保証することはできません。あくまでも「私がどう聞いたか」ってことで許してください

*3:在サハリン韓国人や韓国人被爆者、そして在日の指紋押捺などの問題を挙げていました

*4:これ生姜先生も言ってましたねw

*5:この言葉は使わなかったので「的」なんて入れてみましたw

*6:つまり前者に関しては「太陽政策」が重要な意味を持つわけです

*7:ナイが言うところの「ソフトパワー」ってやつですかね

*8:特に質問のほうの記録と記憶があいまいなので巻いていきますwww

*9:つまり将軍様ですねww

*10:m9キミャー