かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『新聞社崩壊』(畑尾一知)

新聞社崩壊 (新潮新書)

新聞社崩壊 (新潮新書)

朝日新聞販売局に長く勤めた著者が、販売を中心としたビジネスの視点から新聞社の危機的現状と展望を語った本です。
この本の見どころは大まかに言って二つあると思います。一つは世界的に珍しいとされる現在の新聞販売店制度が歴史的にどのように形成され、その現況(残紙やら折込広告の扱いやら)がどうであるかを紹介している点です。また、その視点から見た新聞社の興亡も論じており、これについては餅は餅屋、非常に興味深かったです。恥ずかしいことで須賀、ずっと編集局にいたもので初耳の話もありました。
もう一つは様々な指標を駆使して、新聞業界全体や各新聞社の将来の予測を試みている点です。例えば全国の新聞社の経営状況はこのように分析しています。個々の計算式についていちいち論じませんが、前掲の表はともかく、内容的にちょっと玉石混交な気はしましたね。例えば、というよりここが一番疑問だったので須賀、確かに新聞を購読しない理由の上位に「購読料が高いから」が挙がっているとしても、じゃあ新聞が値下げすればどのくらいの人が再び購読してくれ、あるいは購読を止めずにいてくれるのかはちょっとわからないなという気がします。なるほど新聞は決して安い代物ではないで須賀*1、それよりももっと、人々のライフスタイルや紙の新聞に対する捉え方の影響が大きいのではないかと思いました。値下げできるならそれに越したことはないで生姜、他にも新聞社としてのお金の使い道はある気がします。
ただ最後の提言は興味深かったですね。いわゆるラスト1マイルを握っている新聞販売店が業務を多角化して、地域コミュニティと共存し、それを盛り立てていく役割を担う。新聞がデジタル化していくとすれば新聞社と新聞販売店との関係はかなり緊張を孕んだものになりかねませんが、そこで販売店が地域に根付いていくことは一つの活路かもしれません。競合は同じエリアの他系列販売店より、コンビニかもしれない。案外『ジョブ理論』的な観点で議論できるのかもしれません。

*1:最近まで家で日経を取っていたので須賀、ちょっとびっくりしましたw