かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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『報道不信の構造 (ジャーナリズムの条件 2)』(責任編集・徳山喜雄)

報道不信の構造 (ジャーナリズムの条件 2)

報道不信の構造 (ジャーナリズムの条件 2)

市民を代弁して権力を監視すべきはずの報道に対し、市民の側から不信や批判が高まっていることに焦点を据え、報道側の内的要因を探った4巻シリーズの第2巻です。政治経済、事件、戦争という三つのジャンルでそれぞれ具体的な議論がなされていて、各著者の主張への賛否は置いておいても、報道の端くれにいる者としてはとてもいい示唆を与えてもらった気がします。
この巻の中で一番大きなテーマだったのは、情報の非対称性による権力に対する脆弱さだったのではないかと、個人的な経験も踏まえて思います。例えばここ2カ月日中の外交当局が水面下でどんな交渉をしているかとか、auのアンドロイドはいつ出るのかとか、殺人事件の捜査状況の進展状況とかいう情報について、やはり当事者である権力側の方が多くの情報を持っていることが多い。そういう相手とある程度恒常的に付き合っていく場合に、果たして彼らをどの程度監視できるのか。報復を恐れて委縮してしまってはいないか。そんな問題意識が、各著者の文章から大いに感じられました。その現状を打破するには、この権力との情報の非対称性を崩す努力*1を続け、そしてここぞという場面で読者・視聴者(ひいては市民)の方を向いた判断をすることが重要なのだと思います。
飛び飛びで読んだのであまり記憶が鮮明ではないので須賀(笑)、1巻よりも勉強になり面白かった気がします。

*1:当局内部のみならず広く取材網を持つこと、伝聞ではなく自ら調査分析を行うことなどでしょうか