- 作者: 水越伸
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2002/04/22
- メディア: 単行本
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そしてその意味では、とても有益だったと感じています。ラジオ黎明期などのメディア史的な知見を現在の状況に生かそうという観点から、ごく序盤に「デジタル・メディア社会のダイナミズムをとらえるための補助線」が5つ提示されているので須賀、それが非常に示唆的でありまして、様々なメディアが登場している今、頷かされ、考えさせられるものばかりですので、ここは全て紹介させていただきます。ここを読まれれば以下の私のレビューは不要になるでしょう(笑)
- 新しい情報技術がメディアとして社会的に定着するには、想像以上に長い期間がかかる。
- 新しいメディアは、先行する古いメディアのメタファーに統率されながら社会的様態を形成していく。
- しかし、新しいメディアは徐々に独自の様態を獲得していく。
- 新しいメディアと社会の初期の相互作用過程では、社会の中心領域から反発が出てくる。
- 新しいメディアの可能的様態をめぐる想像力も、ひとたびその姿が確立されると消えて行ってしまう。
ラジオやテレビ、ケータイからiPadまで、いろんなものをあてはめて考えてみると面白いんじゃないかと思うのです。
おまけで感想を二つ。まずはデジタル・メディアとナショナリズムの関係です。文中にもちょこちょこと言及がある*2ので須賀、それがどういう構造で、どのように展開していると言いうるのかを考えるのは私の先ずの課題です。
そしてもう一つ。著者はこれからのメディアと社会の関係について、巨大メディア資本がグローバルに展開する「大きな物語」と、メディア・リテラシーを持つ個人や小さな組織が多様なコミュニケーションを交わしていく「小さな物語」の双方を見据えています。その両者の関係がこれからどのようになっていくのか、著者の問題意識から言えば後者から生まれるメディア実践がいかにして公共圏を形成しうるか、そこがやはり、デジタル・メディア社会の今後を考える上で念頭に置くべき大状況のように思います。3年半前に読んだ『ウェブ進化論』のレビューでも同じオチ使ってるんですけどねwww