かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『ぼくはこんな本を読んできた―立花式読書論、読書術、書斎論』(立花隆)

立花隆の読書論・書斎論や、週刊文春に連載された読書日記などが収録された本です。もともと立花隆にそこまで興味があったわけではないので須賀、その勉強量には脱帽させられます。本人も言っていま須賀、多分本当に勉強が好きなのでしょう。これを読んで初めて「本を読むために会社を辞める」と言ったという彼の言葉の意味が分かるわけで、生半可に考えてはいけないと痛感しました。
ただ、中にある「<人類の知の総体>への挑戦」という文章で展開されている古典論はよくわからない部分もありました。その前にある「知的好奇心のすすめ」で、実用性だけにこだわらない、純粋知的欲求に基づく基礎科学研究の重要性を説いておきながら、いたずらに古典にとらわれずに現在の知のメインストリームにある最新レポートを読むべきと主張するのはどのくらい整合性がとれるのでしょうか? 当然彼も、古典は全く不要だと言っているわけではなく、自身がそうした古典を渉猟してきた話も出てくるわけなので須賀、「人間の知の営みの系統樹」で必ずしも現在の知につながっていないものや、系統樹の根っこに位置づけられている古典の「可能的様態」*1を探ることが果たしうる役割というのは、これまでの知に対するアンチテーゼが求められる危機の時代にこそあるように思うのです。
最後の読書日記は面白かったです。私が読んでいるようなものとは重なりませんが、あれこれ広いジャンルを紹介しているので、その気になれば小ネタ集めにも使えるかもしれません。それがいいかどうかは別として…

*1:メディアの可能的様態という言葉を久しぶりに思い出しました