かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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最近有名な歌手*1の方が亡くなるということが続いているからか、youtubeからここに音楽映像を引用してくることが増えています。しかもそれがたいてい熱狂的なファンを持つ方々で、どれもちょっとずつおいしいところをかじっただけだったりする私は、大手を振って「私は忌野清志郎のファンです!」と言い張るのはやや恥ずかしくて恐ろしい気がしていました。ただ、この人に関しては、ある程度そう主張できるのではないかと控えめに思っています。

井上陽水 FILE FROM 1969

井上陽水 FILE FROM 1969

ただそうなると、その人と自分の共通点と自分が解釈できる(こじつけられる?)部分だけに目が行くというのが人情、というか人の思い込みの恐ろしさです。ましてやこの本は彼の出したレコードやその評、時代時代のインタビューなどを集めた一種のアーカイブスなので、ますます気に入ったところのつまみ食いとなり、読んだところで何の参考にもならないこと請け合いのレビューなので須賀、まぁやらないわけにはいかないですね(笑)
この本を読んで一つ興味深かったのは、その時代時代の井上陽水を見られたな、ということでしょうか。陽水といえば圧倒的に「あのー、僕には勤労意欲というものが、ないんですよねえ。フフフ…」みたいなイメージ*2だったので須賀、いつもそうとは限らない(笑) 特に21世紀に入ってからの彼の精力的な「勤労」ぶりには、先入観もあって結構驚きもしました。でもそれが遊んでいるようにしか見えないというのがこの人のすごいところで、奥田民生と組んだりジャズでセルフカバーしてみたりと、「ここ30年くらい曲作りに悩んでいた」(2001年のインタビューで)彼らしい試行錯誤ぶりが楽しそうです。本人がそう思っているかどうかはかなり疑問で須賀、「おもしろきこともなき世をおもしろく」とはこのことなのかな、と思ったり。
確かこにたんの本の時は、こにたんの人間性に共感した的なことを書いていましたが、翻って今回は端々に、この人に下手に近づくと刺し殺されてしまいそうな恐ろしさを感じました。例えばこんなです。

Q.「傘がない」に登場する娘は実在した人ですか
A.「傘がない」に登場するのは「娘」ですか? (1973年)

そんなわけで、ここからはマイセレクトの名言集(笑)を「つまみ食い」で紹介してお別れしましょう…

でも僕は「友情」だとか「信頼」などということばが生理的に嫌いで、そんなことをとやかく言う人とは何もしゃべりたくないのです。 (1973年)

Q.結婚はしたいですか
A.したいときとしたくないときが3分の周期でやってくる (1973年)

↑これを言ったら大先輩の女性記者に説教喰らいましたww

Q.最近関心あることなんて結構ありますか。
A.それはね、なんで自分はこう何事にも関心を持てないのかっていうことに関心があるの (1974年)

…1、2年前の日本シリーズに行って、巨人サイドの一塁側に座っていて、原が逆転3ランを打った場面。そのとき、球場全体がわいたわけ。そういう位置にいるのが生理的に我慢ならないというか、全員がワーッとなっていると気持ちが悪くなる。だからつくづく自分はそういう人間なんだなと。自分のコンサートでもアンコールでお客さんがなんとなく立ち上がったり、気持ちがひとつになるとか、ああいうのちょっとまずいんじゃないの、と思うんです。 (1990年)

居場所がある人なんて、本当はどこにもいそうもないけど。 (1998年)

…個人的な趣味嗜好に合った言葉はまだまだありましたけど、若干恥ずかしくなってきたので胸の中に秘めておくことにしますw

*1:「アーティスト」という言葉を「歌手」と同義に使う風潮に強い抵抗感を持っています

*2:多分そう言ってる映像を見たことがある