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小説なので話のオチとかにはなるべく触れたくないので須賀、この小説がなぜ『天と地と』というタイトルなのかについては考えてみざるを得ませんでした。私の仮説はこうです。義理を重んじ古来からの権威を奉り、毘沙門天を敬い生涯不犯を貫き、清濁合わせ呑まない性質を持った謙信の世界観こそが「天」であり、約定違反や謀略が渦巻き、しばしば色情に溺れるような生身の人間たちが生きる現実世界が「地」なのではないか。謙信はその半生において、兄である長尾晴景や宿敵・武田信玄のように「地」に生きる人々を軽蔑し、あるいは嫌悪しながら「天」を仰ぎ、その理念を「地」に遍く広めんと努力を重ねるので須賀、それはやはり容易なことではありません。そして謙信と現実世界を、つまり「天と地と」を繋いでいるように見えた人物の訃報に触れて、自分の生きてきた「天」の世界の、ある種の「むなしさ」に謙信は気付き嘆息するのです。
もちろん明確な答えのある性質の問いではないでしょうが、「天と地と」のコントラストを理想と現実の相克と捉えるアイデア(?)はあながち悪くはないんじゃないかと思っています。