かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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「沖縄デマ論駁本」に見る日本の言説環境/『これってホント!? 誤解だらけの沖縄基地』(沖縄タイムス社編集局編)

これってホント!? 誤解だらけの沖縄基地

これってホント!? 誤解だらけの沖縄基地

「新基地反対運動の費用は中国からのカネで賄っている」「普天間周辺の住民は、基地ができてからわざと周辺に住み始めた」―。いわゆる「ニュース女子」の一件や、百田尚樹氏の毎度おなじみの発言により、沖縄に対する陰謀論めいたデマが注目を浴びることが増えました。そうした言説は、ネットを覗けば以前からあったものだそうで須賀、昨今それがテレビで流され、政権に近い言論デマゴーグの発言として新聞紙面を飾るようにまでなっているのです。発信が容易なネットで蓄積された言説が溢れだし、(良し悪しはともかく)特定の人間が編集権を握るオールドメディアにまで流れてきている。ここでネットとオールドメディアの優劣について論じる気はありませんが、ネット社会という新興の、しかし今や巨大な空間において一定の「市民権」を得たればこそ、かつての建前的・権威的な言説の場でも(賛否は別として)無視できなくなっているのでしょうか。
その意味においては、近年こうした本がいくつか出版されるようになったのは、オールドメディアの場に出てきたその種の主張に対し、古きメディアの本丸とも言うべき書籍という媒体で反論しようという、極めて「自然」な反応と言えるのかもしれません。それはもちろん大切なことで生姜、先ほどのイメージを踏まえると、これらの本が世に問われた時点で、既に論駁すべき相手は一歩二歩先を行ってしまっている可能性が高い。新聞社が出すものらしく、平易に過去の歴史を説明し、またちゃんと目の前の相手に取材して編んだ本でありますので、どうかこの本の出版やそれに先立つ新聞連載だけを目指すのではなく、主にネットを情報源とする人に訴求するような方法でアピールしていってほしいと思います。特に沖縄は、観光地としても非常に強いソフトパワーを誇っています。何かそういう部分に絡めて、その美しい島々の歴史を知ってもらう仕掛けがあればいいんですけど。