- 作者: 清水勲
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/09/10
- メディア: 文庫
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著者は、ビゴーの意図を理解するための前提をざっくり二つに分けて提示しています。ひとつは日本社会の外部にいる「他者」としてのビゴーであり、もう一つは居留地に住み、その立場の維持・向上のために日本政府の進める条約改正を時期尚早と訴える「外国人」としてのビゴーです。たとえば明治日本の農村風景を描いた絵を、前者からは「日本の農村に対する新鮮な驚きと、彼らの純朴さへの共感」と解き、後者からなら「日本の近代化の遅れをアピールし、条約改正が尚早であるとの認識を(彼の絵の受容者であった)居留外国人と共有するため」と解く。私はそのどちらが決定的に誤っているなどと言いたいわけではないので須賀、その二つの前提をそれぞれの作品に対してどう使い分けているのか、そこがいまいちよくわからなかったのです。といっても難しい話なんでしょうが、たとえばビゴーのやり取りした書簡などから時期ごとの彼の意図を追うとか、何らかの表現技法からアプローチするとか、何かしら説得的に両説を「使い分ける」方法があったんじゃないかと思います。その辺の据わりがよくなかったのが残念。