かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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ビゴーが見た日本人 (講談社学術文庫)

ビゴーが見た日本人 (講談社学術文庫)

フランスから明治期の日本に渡り、おなじみのものを含めて多くの風刺画を残したビゴーの作品を、解説と共に紹介した本です。この本にはビゴーの絵が100点載っていて、著者の言うとおり当時の社会風俗を知る上で重要である*1ばかりか、ある集団におけるアウトサイダーの視線とはいかなるものか*2学ぶという意味でも興味深いので須賀、著者のつけた解説の方がやや恣意的な印象を受けました。
著者は、ビゴーの意図を理解するための前提をざっくり二つに分けて提示しています。ひとつは日本社会の外部にいる「他者」としてのビゴーであり、もう一つは居留地に住み、その立場の維持・向上のために日本政府の進める条約改正を時期尚早と訴える「外国人」としてのビゴーです。たとえば明治日本の農村風景を描いた絵を、前者からは「日本の農村に対する新鮮な驚きと、彼らの純朴さへの共感」と解き、後者からなら「日本の近代化の遅れをアピールし、条約改正が尚早であるとの認識を(彼の絵の受容者であった)居留外国人と共有するため」と解く。私はそのどちらが決定的に誤っているなどと言いたいわけではないので須賀、その二つの前提をそれぞれの作品に対してどう使い分けているのか、そこがいまいちよくわからなかったのです。といっても難しい話なんでしょうが、たとえばビゴーのやり取りした書簡などから時期ごとの彼の意図を追うとか、何らかの表現技法からアプローチするとか、何かしら説得的に両説を「使い分ける」方法があったんじゃないかと思います。その辺の据わりがよくなかったのが残念。

*1:旅行者の残した文物の重要性はよく指摘されま須賀

*2:この辺がやっぱり自分の問題意識である気がします