- 作者: 北岡伸一
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2004/07/01
- メディア: 新書
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当初はこの本から当時の日本外交について示唆を得られればと思っていたので須賀、彼や彼を取り巻く評論家達の言葉からは、それのみならず今の日本外交や、政治ジャーナリズムのあり方についても大いに示唆を得ることができました。後者について一番印象的だったのは、若き清沢が中外商業新報(今の日経新聞)記者時代に浴びせられた、「政策の如何を問はず、漫然政府に反対するのを偉いやうに思ふのが当然の風潮だ。(中略)信濃太郎*1君も御多分に漏れぬ当世人であらう」というもので、正直耳が痛いながらも尤もな指摘だと思います。また前者についてもとても共感した部分があるので、ちょっと長いので須賀引用してみますね。
「忘れてならない一事は、日本と米国とは、好むと好まざるとにかかはらず、永遠の昔から、永遠の未来まで、太平洋を隔てて、相対して生きねばならぬ運命の下に置かれて居ることである。(中略)隣人の間で、疑ひ、罵しり、怒り、争ふことが相互の幸福でないことを信じる私は、時々に見る米国及び米国人の暴*2若無人の態度に甚だしき不満を覚え乍らも、出来るだけの互譲と諒解によつて、両国の関係を善導したいと懸念する一人なのである。」
実にその通りだと思いますし、この言葉は今発せられたとしても大いに意味を持つでしょう。しかしここ近年の日本の世論の流れを見るならば、「太平洋」の部分を「日本海」と言い換えることが日本の外交に資すると思いますし、もし彼が今の状況を見たならばそう書くのではないでしょうか*3。
それはともかくとして(藁)著者に関して言うならば、話の中で無理に自説をどうこうというようなこともあまりなく、全体として話の流れをすっきりとまとめられていた気がします。それはそれでちょっと物足りなかったりもするんで須賀ねww ただ一点だけ言うならば、清沢の亭主関白的なエピソードを「微笑ましい」と言いつつ紹介する意図はイマイチよく分かりませんでした。
最後に無理やりまとめっぽいことを言うならば、この本は清沢洌という優れた評論家を知る上でも、戦間・戦中期の日本外交を知る上でも、そして北岡伸一をちょっぴり知る*4上でも、ためになる一冊でありました。
私「歴史ということでいえば今半藤一利の『昭和史』を読んでいるので須賀これは先生から見てどうでしょう?」
北岡「あれは素人だね。素人にしてはよく書けてるけど。君もっとちゃんとした本を読みなさい」
私「じゃあ先生のオススメは何かありますか?」
北岡「ボクの本を読みなさい」
出典:かぶとむしアル中