かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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「道新」次長酔って地下鉄線路で寝る、1時間一部不通
札幌市白石区の市営地下鉄東西線南郷13丁目駅で先月、北海道新聞社財務管理室の男性次長(56)が酒に酔って線路上で寝込み、約1時間にわたって同線の一部が不通になっていたことが9日、わかった。
札幌白石署や市交通局によると、1月17日午後10時45分ごろ、次長はホームから転落し、線路上でそのまま寝込み、ホームに入ってきた電車(7両編成)に接触して頭に軽傷を負った。
同社は17日の段階で社員の事故と把握していたが、翌日の朝刊では「会社員」と報道し、公表しなかった。同社経営企画室は「取材の際に社員であることは把握していたが、事故の様態などを総合的に判断し、公表の必要はないと判断した。酒を飲んだうえのことでも、乗客に迷惑をかけたことは申し訳ないと思っている」としている。(2月9日、読売新聞)

北海道新聞社員が地下鉄止める 「会社員」として報道
札幌市白石区の市営地下鉄東西線南郷13丁目駅で1月17日夜、酒に酔って線路内で寝ていて列車と接触し、軽傷を負った男性が北海道新聞社の社員だったことがわかった。この事故の影響で列車12本が運休した。同社は、事故直後に社員であることを確認したが公表せず、翌日の自社の紙面でも「会社員」と報道していた。
同社経営企画室によると、男性は財務管理室の次長。「事故の態様を見て公表の必要はないと判断した」としている。
市交通局によると、直前に駅員が非常停止ボタンを押したが、列車はホームにさしかかっており止まり切れなかった。この影響で、同線の一部が約1時間にわたって運休、2900人に影響が出た。(2月9日、朝日新聞)

「あるある」の捏造から、朝日新聞、TBS、山梨日日新聞と様々な不祥事が報じられる中、またこのようなことが明るみに出てしまいました。もちろんこれは、最近急に増えた、という類のものではないでしょう。ではそういったマスメディアによる一連の不祥事の中で、なぜこのニュースを取り上げるのか。それはこのニュースが、「あるある」以前にもつながる強いマスメディア批判の、大きな原因の一つを示唆していると思うからです。
この事件の概要はこうです。北海道新聞の社員が酒に酔って地下鉄の線路内で寝ていたところ、列車と接触して地下鉄の運行に支障が出た。しかし北海道新聞は寝ていて怪我をした男性を自社の社員であるとはせずに、「会社員」と報道した… 確かに他のマスメディアに関する不祥事と比べれば小さなことかもしれません。しかし自社社員である以上はその事実を報じるべきだと思いますし、道新がそれをしなかった*1ことの方がニュースなのだと思います(その意味で上の二つの記事を比べれば、後者の方が真っ当な書き方をしていると言えるでしょう)。このように道新の一連の対応は批判されるべきだと思うので須賀、今私がここで言いたいのはそのことではありません。こういった隠蔽体質、つまり自分たちのことは報じないというこの姿勢が、近年のマスメディア批判の広まりの大きな要因なのではないかと思うのです。
マスメディアは政権を批判し、政治家や官僚の汚職を暴き、そして企業の不祥事を追及します。それはもちろん必要なことで、それこそがジャーナリズムなので須賀、長く彼らは彼ら自身のことを、多く語ろうとはしませんでした。他の社会的アクターのことは多少なりとも分かるのに、マスメディア自身がどうなっているのか分からない。その不信感が批判の根底にあるような気がしますし、それがあってこそ時々漏れ聞こえるマスメディアの不祥事がより強い批判をもって迎えられるのでしょう。確かに「あるある」以降、他社の問題に関しての言及は活発になった気がしま須賀、自社のことに関しては「灯台下暗し」ということもあるのでしょうか、まだまだと言わざるを得ません。
なにもこれは悪いことばかりに関して言っているのではありません。マスメディアの現場の面白い話やちょっといい話といったものを、節度を守りながら紹介していくことはあながち間違ったことではないと思います。そういう意味合いをも含めて、マスメディアが彼ら自身のことを、いい面も悪い面も含めてある程度しっかり語っていくことこそが、「マスメディア批判」への一つの答えになるのではないかと思うので須賀。

*1:午後6時時点の北海道新聞のウェブサイトにも、このことに関する言及はありませんでした