かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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安倍首相「全部イギリスのせいだ」/イギリス、EU離脱へ

Brexit: David Cameron to quit after UK votes to leave EU - BBC News
今の利害関係や政治経済社会事情はともかく、EUを離脱したイギリスにどんな長期的展望があるのかよくわからないというのが今の率直な感想です。確かに「民主主義の赤字」*1は構造的な問題だろうと思いま須賀、こんな解消方法が本当になされるとは驚きです。「余計なことをやってくれた」キャメロン首相は今後どう身を処するつもりなんでしょうかね?
日本では参院選が告示されていますので、そちらの絡みでも一言。安倍首相は「世界的経済危機が迫っている」ことを理由に消費税増税を再延期しました。本当に危機が起きたら「それ見たことか」と言えるし、起きなければ「アベノミクスで回避した」と言い張ることは(レトリック上)可能なので、お上手だなあと思ってはいたので須賀、これで間違いなく「延期は正しかった」と主張するでしょうね。そして、日本経済の全ての問題の原因は十把一からげに「世界経済危機のせい」とされるのでしょう。

*1:EUに権限が集まることで、加盟国の政治における民主的正統性が低下しているとする指摘

人の口に戸は立てられぬ/『北朝鮮建国神話の崩壊』(金賛汀)

朝鮮人民革命軍を率いて抗日ゲリラ戦を闘い抜き、ソ連軍と協力して朝鮮に凱旋したはずの金日成が、実は中国共産党員だった上に、ソ連の対日宣戦布告後も一切戦闘行為は行わず、ソ連の軍服と大尉の階級章をつけてこっそり元山に上陸していた。金正日も聖山・白頭山の密営ではなくロシア沿海州の宇和なにをする(ry
…ということをかつての戦友たちへのインタビューなどを通じて暴き出した話です。
冷戦終結と前後して、朝鮮民主主義人民共和国の建国に深い関わりを持つ中ソの史料や証言が活用できるようになってきた結果、「金王朝」による支配に正統性を与えていた「神話」の虚構が暴かれていくさまが描かれています。金日成による抗日パルチザン活動を「国造り神話」とすることは、反日共産主義をレゾンデートルに置い北朝鮮にとっては避けられない帰結であるようにも見えま須賀、本当に「伝統の創造」ならぬ「伝説の創造」を国家的に実行してしまったわけで、これまた必然的な帰結として「人の口に戸は立てられぬ」ということわざが示すような事態が起こってくるということなのでしょう。
とはいえ金日成抗日パルチザンとして一定の戦果を上げていたことはおそらく事実であり、また規模は小さくとも、ソ連から帰国するパルチザンたちのリーダー格だったというのも本当のようです。だったら事実は事実のまま歴史に刻んでもそこまで問題はなかったんじゃなかろうか、なんて甘いことを思った半面、「勝てば官軍」で勝者が歴史を書いていくというのは大なり小なり、普遍的なことでもあるのだろうなあとも感じました。
ちなみにこの本は、雑な言い方をすれば「北朝鮮が好きな人」以外にはちょっとおすすめしかねます(笑)