かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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『リムジンガン 第5号―北朝鮮内部からの通信』(責任編集・石丸次郎)

リムジンガン 第5号(2011年5月)―北朝鮮内部からの通信

リムジンガン 第5号(2011年5月)―北朝鮮内部からの通信

北朝鮮内部でカメラを回す現地のジャーナリストらの報告からまとめられた本です。今回は金正恩登場への市民の受け止めや、デノミ後の経済の混乱具合、軍などの「看板」を借りて民営される石炭産業やバス網…といった情報が紹介されています。一読すれば「苦難の行軍」後の北朝鮮の市民のたくましさが感じられますし、公式見解には出て来ないような社会の様子の一端―市民の創意工夫などによって否応なく市場経済的なシステムが芽生え、広がっており、往々にして賄賂がその「本音」部分と社会主義国家としての「建前」を架橋、ある種の相互依存さえ生まれている―を垣間見ることができます。
ああいう国だけに、具体的な情報が詰め込まれたこの企画は貴重なものだと思います。
もちろん内部のジャーナリストたちは、ほとんどの場合においてこっそり取材をしていて、写真なんかも要は隠し撮りが主なので須賀、どの情報にせよ明かせる範囲で出典を示す努力をするというジャーナリズムの基本動作を怠っていないことは一冊を通じて好感を持てます。巻末には彼らの取材姿勢みたいなものも記されていて、特に個人的に関心の高い国ということもあってか、今すぐに「こっちをやります!」と駆けつけることは難しいまでも、なんとかして彼らを応援できないかという気持ちにはさせられました。