かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『女は男の指を見る』(竹内久美子)

女は男の指を見る (新潮新書)

女は男の指を見る (新潮新書)

動物行動学や進化論の知見から、人間や動物のオスとメスの関係などについて解釈を試みる本です。それこそ男性の指は生殖器と同じHox遺伝子が形作りを担当しているので、指を見ればその「出来具合」がわかるんだなんていう下世話な話から、男が免疫力を低めるホルモンであるテストステロンを分泌して外見的な魅力を高めるのは、そうしても問題ないくらいもともと丈夫なんだとアピールするためだろうとか、浮気など人間の男女間の行動を動物のオスメスという観点から紐解くような推論まで、興味深い話が幅広く扱われており、話題としては総じて面白かったです。個人的にドーキンス的な「てか人間とか遺伝子の乗り物でしかないからww」みたいな発想とか、著者のように人間の動物としての側面を強調する見方を割とすんなり受け入れられたのもその一因かもしれません。ただ念のため言っておきま須賀、人間にも動物としての側面がありますよねと言っているわけで、「遺伝的に劣った奴らはガス室で根絶やしにしろ!」というような、カント的に言えば「人間を手段として用いる」極致のような考え方とはもちろん一線を画すべきです。
ただその意味でも、最後になって島国だ何だを持ち出して安易な日本人論を展開してしまうのは、論理展開が雑すぎるとか品位を欠くというより、危険なことであるとすら思えます。遺伝に関する知見と「民族」というような文化的であり、かつ政治的な概念がいかに結合しやすいか、逆に言えばこの本の最後の最後で期せずして教えられた気がしますし、アウシュビッツ帰りの身にはかなり鼻につくわけです。
あと細かいことなんですけど、鳥の「浮気」の頻度についてのメラーの研究で、人間の目から見た美しさとやらを数値化して比較検討するなんて手法が科学的と見なし得るんですかね? 「君は前田敦子の方がいいと言うかもしれないけど、オレは大島優子の方が絶対かわいいと思う!」なんてレベルじゃない次元で、鳥と人間の美的センスが違ったらどうするんでしょうか? まあきっと多くの鳥類も私の意見には賛同してくれると思っていま須賀…