- 作者: 金平茂紀
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/07/22
- メディア: 新書
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前半では、それらの報じられ方を丹念に追いながら、それに際しての報道の問題点を指摘し、後半は日本のマスメディアやそれをめぐる言説状況をその「切断点」に着目しながらややアカデミックに論じています。日本のマスコミ研究をめぐる状況を鑑みると、それは往々にしてアカデミズムと現場によるお互いへの不信感と軽蔑に染め上げられていることが多いようで須賀、「現場とアカデミズムは車の両輪」と語るこの本の著者は、その言葉を体現すべく試行錯誤を重ね、しかしまたその上で、メディアの人間としての視座から問題を引き受けようとしている。これはそう簡単なことではないと思います。ただこの本の中ではあくまでも文字通りの「車の両輪」であったというか、両輪の轍が交わることのないように、アカデミズムと現場という二つの視座が交差し、混ざり合うことができていたかというとそこは疑問符です。
それでも一つ、記者証を持っているというただそれだけの理由で様々な特権を与えられるマスメディアの中で働き、またそうしようとする者にとって非常に示唆深いと思える箇所があったので引用してみますね。「『報道の自由』とか『情報源の秘匿』という権利は、マスメディアで仕事をする人間たちに、生得的に与えられる『自然権』ではなく、不断の取材活動の中で闘いとられるべき『獲得権』だと、私はいまでも思っている」