かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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法哲学を専門とする著者が、論争的なスタイルで道徳と法を規範理論的に論じた本です。前半はH.L.A.ハートによる法的権利に関する選択説や人格の同一性に関するD.パーフィットの議論などによって、J.L.マッキーの言う「権利基底道徳」を基礎付ける試みがなされ、後半ではそれまでの議論を援用しながら契約の拘束力や刑事責任論における自由意志の問題を論じています。
前半では議論全体が抽象的な上に、他説からの反論、再反論…という形が取られていたためか、肝心の「権利基底道徳」について外堀は埋まったもののその実質的な意味はあまり見えてきませんでした。また、パーフィットの人格の同一性の議論が極めて還元論的だったのにも違和感を覚えました。あと後半の刑事責任論の部分は、「決定論」という言葉の多義性*1に引っ張られてよく分からなくなってしまったというか、彼が何を指して「決定論」と言っているのかが不明瞭だったような気がします。
ただまぁああだこうだ考えながら読むのって私は嫌いじゃないねwww

*1:ってよりは人それぞれこの言葉に込める意味・世界観にばらつきがある